2019年9月6日金曜日

メンバーズ(vol.4)

『ゆめみるけんり』vol.4メンバーの紹介です。
「作品解題、または“手紙”にまつわる記憶」と、“手紙”から連想する作品を一つ挙げてもらいました。

◆石井優貴(いしいゆうき)
死んだ人間の手紙や日記を読む機会が多いのですが、その都度、大学でお世話になったある先生が仰っていた「人間は自分にとって本当に大事なことを書き残さない」という言葉を思い出します。我が身を振り返っても、きっとそうなのだろうという気がします。シェーンベルクも一番大事なことを文章にしない人間だったようです。
 *アントン・チェーホフ『ワーニカ』

◆くだしあ
#2000年生まれ、大学生。
父の書斎に、一年前に逝去した大親友・Mさんからの手紙が飾ってあります。今でも父の背中を押し続ける、亡き人からの言葉。この様子を見て、第三者のわたしはポジティブな呪いを感じました。手紙は、残るものです。一度外在化させて他者に届いた言葉は、たとえ当人が死んでもステイし続けます。まるで、実体はなくても他者を変容させてしまう、呪いのように。
 *ソフィ・カル「限局性激痛」

◆工藤順(くどうなお) 
#労働者。プラトーノフ『不死』翻訳。HP:https://junkdough.wordpress.com
つねに誰かに語りかけるやり方で、わたしは文章を書きたいと長いこと思ってきました。そうであれば、わたしはつねに“手紙”を書きたかったのかもしれません。SNSのreply (отклик?)に対して、わたしは─responsibilityに開かれたものとしての─responce (ответ)を好みます。たとえどちらも期待できなくとも、ひとでありつづけるために、わたしは手紙を書きつづけたい。
 *『新約聖書』

◆倉畑雄太(くらはたゆうた)
久しぶりに詩を訳した。分からないところは友人から聞いた。別の友人がこの詩を見て絵を描いてくれた。手紙をやり取りするような不思議な感覚があった。
 *フランツ・カフカ『ミレナへの手紙』

◆國米陸(こくまいりく)
#instagram 絵@neconoami きのこ@kinoconoami
『あな』は、別の宇宙の別の星のすごく昔のあるひとに送った、送られた手紙だと後で気づいた。倉畑さんに何か書けばと言われ、次の日の朝、羽根木公園のベンチで書いた。ぼうっとした。
ギャビが英語に翻訳してくれた。ギャビはリトアニアの港町から来た。
去年の10月から絵は描き始まった。
 *アーノルド・ローベル 『ふたりはともだち』

◆佐々木樹(ささきみき)
#詩人/美術家。U.N.I.T. 主催。1992年 宮城県仙台市生まれ、2015年 法政大学社会学部 卒業、2017年 日本大学大学院芸術学研究科 修了 HP:http://kuri-to-unit.info
手紙の持つ力である初めて触れた時の鮮烈さと繰り返し読み直していくことで分化し続ける想像の小道の生成、綯い交ぜになったそれらを整理するための“ことば”ではないもうひとつの言語の方法論として物質詩は存在しているのかもしれない。
 *福永武彦『草の花』

◆佐取優太(さとりゆうた)
#1995年生,早大文学部卒。Note:https://note.mu/iutus_sator
キリスト教について自分の考えていること(というか,直観していること)を書いたつもりです。真新しいことは何もありませんが,ともあれ,21世紀にlingua latinaの「新文献」を編み出せたことに満足しています。
 *ペトルス・アベラルドゥス『厄災の記』

◆砂漠で生きる(さばくでいきる)
#Twitter:@mstkaqrg
青い空、白い砂浜、揺れるヤシの木。
「最高のヴァカンス」と書かれている絵葉書が遠くから届いてほしいです。
 *「やぎさんゆうびん」(童謡)

◆杉浦朋美(すぎうらともみ)
#1991年生まれ
フリオ・コルタサルの短編「パリにいる若い女性に宛てた手紙」をモチーフに制作しました。
昔の恋人からもらった手紙やもう会うことのない亡くなった人からの手紙は、書き手の分身のようでもあり、ある種の生々しさを宿しているように感じます。その生々しさと対照的な子ウサギをあえて可愛らしく紡ぎました。
 *ガブリエル・ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』

◆髙野由美(たかのゆみ)
#HP:https://yoooo0oumi.wordpress.com
「You leave someday」という絵は、「いつかいなくなってしまう」けれど、出逢う素晴らしさを想ったものです。
絵の上で、景色や人の姿が出てきた時、前から求めていた風景と出逢ったような感動があります。そして観る人にもそれが起こるかもしれないという、共鳴について考えています。
 *池田晶子・陸田真志『死と生きる:獄中哲学対話』

◆谷口新之介
#instagram:shinnosuke_0717
僕にはあの詩の意味がさっぱり判らず、なのにさっぱり判る気がして無邪気に何かを描きました。もしかしたらアスガルさんは、叙情の合間の隙間の隅に、あんな紋様を描いたかもしれません。描かなかったかも。どちらにせよ、僕はあんな紋様を描きました。そして嬉しいことに、僕にはあの紋様の意味がさっぱり判らないのです。
 *ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』

◆tsugumi
#1992年広島生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。現在は広島市内でフリーランスとしてゆったりと活動しています。
うさぎのぬいぐるみフェリックスが世界旅行をし、持ち主のソフィへ各国から外国だよりを送ります。その手紙が封筒ごとそのままページに貼ってある可愛らしい仕掛け絵本です。小さい頃、まるで自分に手紙が届いたみたいで嬉しくて何度も読み返しました。遠く離れていても、時間と距離を経て大切に運ばれてくる愛。手紙は大掛かりなものではないが故に、送る人と受け取る人の双方だけにわかる内緒の感動(ロマンス)が詰まっているんだなぁと思える愛くるしい一冊です。
 *ランゲン/ドロープ『フェリックスの手紙』

◆藤澤大智(ふじさわだいち)
手紙を投函すると、到着までの長い時間を思い、嫌気が差す。が、じつは時間こそが手紙の核心であって、その待ち時間は、到着を味わうための作法となる。性急な人間は手紙に向かない。手紙愛好家は、聖遺物を扱うように手紙を封入し、何世紀も保管する義務を負うように封蝋し、自らの手で投函する。(マンリオ・ズガランブロ)
 *井上靖『猟銃』

◆ふじたみさと
小学生のころ、毎日のように手紙を交換しては、いろんな友達の字を真似していました。結果、いまだに字体が安定しません。
 *吉田加南子さんの文章すべて

◆プロホロワ・マリア
#ロシア出身。現在、東京外国語大学の大学院生。prokhorovamaria1*gmail.com
何年か前に徳島県の心の手紙館というところに行って、未来の自分宛に手紙を出しました。今読み返すと、そのときに悩んでいた問題は今も全く解決できていないことに苦笑してしまいます。でも、やはり書いてみて良かったです。何があっても一生一緒にいてくれる相手には、たまに手紙くらい出すのは最低限の礼儀ではないでしょうか。
 *村田沙耶香『コンビニエンスストア様』

◆村山木乃実(むらやまこのみ)
#東京外国語大学博士課程(DC2)twitter:@miveyederakht
大学生のころ、実家にいる祖母と文通していた記憶ですかね…
 *アイヌルクザート・ハマダーニーの書簡集

◆山口勲
#1983年生。てわたしブックスを主催し詩の雑誌『て、わた し』を刊行。詩の朗読会 千葉詩亭・くにたちコミュニティ共催。HP:http://tewatashibooks.com/
2010年から2015年にかけて、「なくしたものにお手紙をおくろう」というワークショップをやっていた。
なくしたものにお手紙をおくり、他の人がなくしたものになったつもりでお返事を書くというワークショップ。
私の周りがいそがしくなり、ワークショップができなくなった結果、家にはたくさんのお手紙が置いてある。
この手紙の一つ一つにお返事を書いてもらえる人を探す機会を作ることが求められているのだけど
 *アーノルド・ローベル 『ふたりはともだち』

◆よるか
#blog:http://yoruka282232356.wordpress.com
ダンボール一箱に収まり切らないぐらい手紙を書き、手紙をもらった。そして処分もしてきた。メールはゴミ箱に入れてもそこまで心が痛まないのに、手紙をシュレッダーにかけた時は心が痛んだ。不思議なものである。そこにはなんの違いがあるんだろう。手紙も電子メールもLINEやWhat’s Appも誰かからの言葉には変わりないのに。心痛む記憶が手紙にはある。
 *「魔女の宅急便」(アニメ)

◆Kamila Lin(かみらりん)
#FB:Kamila Lin Illustration
Привет, меня зовут Камила, рисую иллюстрации для себя, а работаю оформителем витрин в городе Санкт-Петербурге. (хотя это все пустые факты, и они меня никак не выражают..)[こんにちは、カミラです。イラストは自分のために描いています。サンクト・ペテルブルグという街でショーウィンドウをつくる仕事をしています。(これはぜんぶつまらない事実でしかないけれど、どうしてもこんなふうにしか書けないので……)]
 *フィンセント・ファン・ゴッホ「弟テオへの手紙」

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