2019年10月1日火曜日

【イベント】プラトーノフ読書会(10/11)

本屋さん「平井の本棚」にて開催される「翻訳者と読む読書会」で、ゆめみるけんりの工藤順がお話しします。

死なないために──翻訳者とプラトーノフを読む読書会

日時:2019年10月11日(金)19:30〜
場所:平井の本棚 2F(総武線平井駅北口すぐ)
参加費:1,200円 (*飲食持ち込み歓迎、ウォトカあり)
ご予約は、メール、Facebook、平井の本棚店頭で受け付けています。


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労働から……宇宙へ、不死へ! 

ロシア革命の時代、独特な視点から労働と宇宙とのつながりについて書いたロシア作家アンドレイ・プラトーノフ。もしも私たちの日々の労働が、宇宙とつながっているとしたら……? そんな何だか世界が変わって見えるスケールの大きさが、プラトーノフの魅力のひとつです。

この読書会では、翻訳者をまじえ、参加者のみなさんとフラットに、プラトーノフ作品の魅力についておしゃべりしたいと思います。未読の方も大歓迎!

○翻訳者:工藤 順(くどうなお)
1992年生まれ。労働者。ロシア文化研究。プラトーノフ『不死』(未知谷、2018)が初の翻訳書。 「ゆめみるけんり」主宰。http://pokayanie.blogspot.jp

○会場:平井の本棚(ひらいのほんだな)
総武線平井駅北口からすぐの本屋さん。2018年オープン。https://hirai-shelf.tokyo/

2019年9月6日金曜日

コンテンツ(vol.4)

『ゆめみるけんり』vol.4:目次

◆特集:手紙
- 佐々木樹「《物質詩》/《Material poetry》」
- 杉浦朋美「十進法の子兎」
- アスガル・ゴーンダヴィー/倉畑雄太・谷口新之介「抒情詩」
- アリー・シャリーアティー/村山木乃実「妻への手紙」
- Iutus Sator「De Profundis/深淵より」
- よるか「モノローグ」
- ジャコモ・レオパルディ/藤澤大智「無限のあとで:レオパルディの詩と手紙」
- くだしあ「フィット」
- Kamila Lin「スニーカーへの手紙」
- 髙野由美「You leave someday」
- 國米陸「あな」
- アルノルト・シェーンベルク/石井優貴「シェーンベルク(1874〜1951)の書簡から」
- ふじたみさと「詩は不在からの合図」+「眠りについて」
- プロホロワ・マリア/Прохорова Мария 「2通の手紙」
- 砂漠で生きる「仔ヌーを逃がす」
- 山口勲「訓戒」
- マリーナ・ツヴェターエワ+ボリス・パステルナーク/工藤順「あなたってなんて私なんだろう!:パステルナークとツヴェターエワの手紙より」

◆書店コラム:忘日舎

◆連載
- フェルナンド・ペソア/ふじたみさと「アナーキスト・バンカー」(2)
- ニコライ・フョードロフ/工藤順「著作者の義務と、博物館・図書館の権利」(2)

表紙:tsugumi
写真:ふじたみさと、工藤順
章扉:髙野由美
エピグラム構成:工藤 順

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Table of Contents for “yumemirukenri 04”

◆Issue: Letters
- Miki Sasaki “《Material Poetry》”
- Tomomi Sugiura “Decimal System Rabbits”
- Aṣghar Gonḍavī (اصغر گونڈوی) / Yuta Kurahata “Lyric”
- Ali Shariati (علی شریعتی) / Konomi Murayama “A Letter to Pūrān”
- Iutus Sator (Yuta Satori) “De Profundis (Epistula ad Iuvenem Philosophum)”
- Yoruka “Monologue”
- Giacomo Leopardi / Daichi Fujisawa “After Infinity: A Poem and Letters by G. Leopardi”
- Kudashia “Fit”
- Kamila Lin “Письмо кроссовкам (A Letter to my Sneakers)”
- Yumi Takano “You leave someday”
- Liku Kokumai “Hole”
- Arnold Schönberg / Yuki Ishii “Selected Letters of A. Schönberg”
- Misato Fujita “Poetry Is a Signal from the Not-Being” + “On Sleeping”
- Прохорова Мария (Prokhorova Maria) “Письма (Letters)”
- sabaku de ikiru “Let the Baby Gnu Run”
- Isao Yamaguchi “Instructions”
- Марина Цветаева и Борис Пастернак (Marina Tsvetaeva and Boris Pasternak) / Nao Kudo “How ‘I’ you are!: Letters between Tsvetaeva and Pasternak”

◆Book Shop Column: Vojitsusha

◆Serials
- Fernando Pessoa / Misato e Nao Fujita “O Banqueiro Anarquista -2-”
- Nikolai Fyodorov / Nao Kudo “Author’s Duty and the rights of museums and libraries -2-”

Cover: tsugumi
Photography: Misato Fujita and Nao Kudo
Paintings for the Chapter Title Pages: Yumi Takano
Composition of Epigrams: Nao Kudo

メンバーズ(vol.4)

『ゆめみるけんり』vol.4メンバーの紹介です。
「作品解題、または“手紙”にまつわる記憶」と、“手紙”から連想する作品を一つ挙げてもらいました。

◆石井優貴(いしいゆうき)
死んだ人間の手紙や日記を読む機会が多いのですが、その都度、大学でお世話になったある先生が仰っていた「人間は自分にとって本当に大事なことを書き残さない」という言葉を思い出します。我が身を振り返っても、きっとそうなのだろうという気がします。シェーンベルクも一番大事なことを文章にしない人間だったようです。
 *アントン・チェーホフ『ワーニカ』

◆くだしあ
#2000年生まれ、大学生。
父の書斎に、一年前に逝去した大親友・Mさんからの手紙が飾ってあります。今でも父の背中を押し続ける、亡き人からの言葉。この様子を見て、第三者のわたしはポジティブな呪いを感じました。手紙は、残るものです。一度外在化させて他者に届いた言葉は、たとえ当人が死んでもステイし続けます。まるで、実体はなくても他者を変容させてしまう、呪いのように。
 *ソフィ・カル「限局性激痛」

◆工藤順(くどうなお) 
#労働者。プラトーノフ『不死』翻訳。HP:https://junkdough.wordpress.com
つねに誰かに語りかけるやり方で、わたしは文章を書きたいと長いこと思ってきました。そうであれば、わたしはつねに“手紙”を書きたかったのかもしれません。SNSのreply (отклик?)に対して、わたしは─responsibilityに開かれたものとしての─responce (ответ)を好みます。たとえどちらも期待できなくとも、ひとでありつづけるために、わたしは手紙を書きつづけたい。
 *『新約聖書』

◆倉畑雄太(くらはたゆうた)
久しぶりに詩を訳した。分からないところは友人から聞いた。別の友人がこの詩を見て絵を描いてくれた。手紙をやり取りするような不思議な感覚があった。
 *フランツ・カフカ『ミレナへの手紙』

◆國米陸(こくまいりく)
#instagram 絵@neconoami きのこ@kinoconoami
『あな』は、別の宇宙の別の星のすごく昔のあるひとに送った、送られた手紙だと後で気づいた。倉畑さんに何か書けばと言われ、次の日の朝、羽根木公園のベンチで書いた。ぼうっとした。
ギャビが英語に翻訳してくれた。ギャビはリトアニアの港町から来た。
去年の10月から絵は描き始まった。
 *アーノルド・ローベル 『ふたりはともだち』

◆佐々木樹(ささきみき)
#詩人/美術家。U.N.I.T. 主催。1992年 宮城県仙台市生まれ、2015年 法政大学社会学部 卒業、2017年 日本大学大学院芸術学研究科 修了 HP:http://kuri-to-unit.info
手紙の持つ力である初めて触れた時の鮮烈さと繰り返し読み直していくことで分化し続ける想像の小道の生成、綯い交ぜになったそれらを整理するための“ことば”ではないもうひとつの言語の方法論として物質詩は存在しているのかもしれない。
 *福永武彦『草の花』

◆佐取優太(さとりゆうた)
#1995年生,早大文学部卒。Note:https://note.mu/iutus_sator
キリスト教について自分の考えていること(というか,直観していること)を書いたつもりです。真新しいことは何もありませんが,ともあれ,21世紀にlingua latinaの「新文献」を編み出せたことに満足しています。
 *ペトルス・アベラルドゥス『厄災の記』

◆砂漠で生きる(さばくでいきる)
#Twitter:@mstkaqrg
青い空、白い砂浜、揺れるヤシの木。
「最高のヴァカンス」と書かれている絵葉書が遠くから届いてほしいです。
 *「やぎさんゆうびん」(童謡)

◆杉浦朋美(すぎうらともみ)
#1991年生まれ
フリオ・コルタサルの短編「パリにいる若い女性に宛てた手紙」をモチーフに制作しました。
昔の恋人からもらった手紙やもう会うことのない亡くなった人からの手紙は、書き手の分身のようでもあり、ある種の生々しさを宿しているように感じます。その生々しさと対照的な子ウサギをあえて可愛らしく紡ぎました。
 *ガブリエル・ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』

◆髙野由美(たかのゆみ)
#HP:https://yoooo0oumi.wordpress.com
「You leave someday」という絵は、「いつかいなくなってしまう」けれど、出逢う素晴らしさを想ったものです。
絵の上で、景色や人の姿が出てきた時、前から求めていた風景と出逢ったような感動があります。そして観る人にもそれが起こるかもしれないという、共鳴について考えています。
 *池田晶子・陸田真志『死と生きる:獄中哲学対話』

◆谷口新之介
#instagram:shinnosuke_0717
僕にはあの詩の意味がさっぱり判らず、なのにさっぱり判る気がして無邪気に何かを描きました。もしかしたらアスガルさんは、叙情の合間の隙間の隅に、あんな紋様を描いたかもしれません。描かなかったかも。どちらにせよ、僕はあんな紋様を描きました。そして嬉しいことに、僕にはあの紋様の意味がさっぱり判らないのです。
 *ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』

◆tsugumi
#1992年広島生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。現在は広島市内でフリーランスとしてゆったりと活動しています。
うさぎのぬいぐるみフェリックスが世界旅行をし、持ち主のソフィへ各国から外国だよりを送ります。その手紙が封筒ごとそのままページに貼ってある可愛らしい仕掛け絵本です。小さい頃、まるで自分に手紙が届いたみたいで嬉しくて何度も読み返しました。遠く離れていても、時間と距離を経て大切に運ばれてくる愛。手紙は大掛かりなものではないが故に、送る人と受け取る人の双方だけにわかる内緒の感動(ロマンス)が詰まっているんだなぁと思える愛くるしい一冊です。
 *ランゲン/ドロープ『フェリックスの手紙』

◆藤澤大智(ふじさわだいち)
手紙を投函すると、到着までの長い時間を思い、嫌気が差す。が、じつは時間こそが手紙の核心であって、その待ち時間は、到着を味わうための作法となる。性急な人間は手紙に向かない。手紙愛好家は、聖遺物を扱うように手紙を封入し、何世紀も保管する義務を負うように封蝋し、自らの手で投函する。(マンリオ・ズガランブロ)
 *井上靖『猟銃』

◆ふじたみさと
小学生のころ、毎日のように手紙を交換しては、いろんな友達の字を真似していました。結果、いまだに字体が安定しません。
 *吉田加南子さんの文章すべて

◆プロホロワ・マリア
#ロシア出身。現在、東京外国語大学の大学院生。prokhorovamaria1*gmail.com
何年か前に徳島県の心の手紙館というところに行って、未来の自分宛に手紙を出しました。今読み返すと、そのときに悩んでいた問題は今も全く解決できていないことに苦笑してしまいます。でも、やはり書いてみて良かったです。何があっても一生一緒にいてくれる相手には、たまに手紙くらい出すのは最低限の礼儀ではないでしょうか。
 *村田沙耶香『コンビニエンスストア様』

◆村山木乃実(むらやまこのみ)
#東京外国語大学博士課程(DC2)twitter:@miveyederakht
大学生のころ、実家にいる祖母と文通していた記憶ですかね…
 *アイヌルクザート・ハマダーニーの書簡集

◆山口勲
#1983年生。てわたしブックスを主催し詩の雑誌『て、わた し』を刊行。詩の朗読会 千葉詩亭・くにたちコミュニティ共催。HP:http://tewatashibooks.com/
2010年から2015年にかけて、「なくしたものにお手紙をおくろう」というワークショップをやっていた。
なくしたものにお手紙をおくり、他の人がなくしたものになったつもりでお返事を書くというワークショップ。
私の周りがいそがしくなり、ワークショップができなくなった結果、家にはたくさんのお手紙が置いてある。
この手紙の一つ一つにお返事を書いてもらえる人を探す機会を作ることが求められているのだけど
 *アーノルド・ローベル 『ふたりはともだち』

◆よるか
#blog:http://yoruka282232356.wordpress.com
ダンボール一箱に収まり切らないぐらい手紙を書き、手紙をもらった。そして処分もしてきた。メールはゴミ箱に入れてもそこまで心が痛まないのに、手紙をシュレッダーにかけた時は心が痛んだ。不思議なものである。そこにはなんの違いがあるんだろう。手紙も電子メールもLINEやWhat’s Appも誰かからの言葉には変わりないのに。心痛む記憶が手紙にはある。
 *「魔女の宅急便」(アニメ)

◆Kamila Lin(かみらりん)
#FB:Kamila Lin Illustration
Привет, меня зовут Камила, рисую иллюстрации для себя, а работаю оформителем витрин в городе Санкт-Петербурге. (хотя это все пустые факты, и они меня никак не выражают..)[こんにちは、カミラです。イラストは自分のために描いています。サンクト・ペテルブルグという街でショーウィンドウをつくる仕事をしています。(これはぜんぶつまらない事実でしかないけれど、どうしてもこんなふうにしか書けないので……)]
 *フィンセント・ファン・ゴッホ「弟テオへの手紙」

2019年8月23日金曜日

「ゆめみるけんり」vol.4

表紙デザイン:tsugumi
Cover designed by tsugumi

今秋も、詩と生活のzine『ゆめみるけんり』の新刊を刊行します。vol.4は「手紙」特集です。

vol.4は、今まで以上にヴァラエティに富んだ中身になります。翻訳としては、イタリアやイラン、オーストリア、ロシアから手紙が届いています。もちろん日本語でのオリジナル作品や驚異のラテン語創作もあり、また刺繍作品や絵画、イラストなど、ヴィジュアル面でもかなり充実しています。いずれも『ゆめみるけんり』でしか読めない作品ばかり。ご期待ください。

新しい試みとして、メールニュースを始めます(気まぐれ・不定期配信)。vol.4の発売もいち早くお知らせします。ご希望の方は以下のフォームより、メールアドレスの登録をお願いします。(なお、Facebookのページ(https://www.facebook.com/yumemirukenri/)でも随時お知らせします。)元気が出るので、応援してくださっている方、ぜひ。

「ゆめみるけんり」vol.4(2019年秋発売)
特集「手紙」

コンテンツ:【更新】vol.4の目次です。
メンバーズ:【更新】vol.4に参加する人たちの紹介。

New issue (vol.4) of our zine "yumemirukenri" will be out in autumn this year.
We will let you know by e-mail or on our FB page (https://www.facebook.com/yumemirukenri/), when the zine is out. To register for e-mail news, send your e-mail address from the form below.




フォームやメールニュース、vol.4についてなど、お問い合わせはdroit.de.yumemir*gmail.com(*を@に変えてください)まで。
Contact: droit.de.yumemir*gmail.com



〈vol.4によせて〉

詩の多くが、おそらく、誰かに宛てて書かれてきました。その反面、詩にとって本質的だったのはむしろ、その宛先に詩が届かないということであったように思います。すくなくとも現在の私たちが、「◯◯へ」宛てられた詩を読んで(しまって)いるということ自体、そのことをよく表してはいないでしょうか。
 詩は、届かず、遅配され、誤配され、窃み読まれることを運命づけられた手紙です。“原稿は燃えないものだ”――作者の死に際して燃やされるはずだったあるチェコの作家の原稿は、遺言を守らなかった悪友の手によって世に出され、そしていまの今まで私たちは(この日本という世界の涯てでさえ!)その原稿を読んで(しまって)いるのでした。
 (しまって)――つまりうっかり、時ならず、何の権利もなく。しかしながら、詩の本来的な力もまた、ここに宿るとわたしには思われます。つまり、詩が作者の想定をこえて誤配されてゆくこと。〈詩人の世紀〉であった20世紀の詩人たちは、あるいはこの一点に賭けながら、収容所の中で、寒さと飢餓の中で、絶望の中で、紙とペンを手放そうとしなかったとも言えないでしょうか。ロシアの詩人ツヴェターエワはこんな印象的なフレーズをつづっています:「あなたへ――100年の時をこえて」。彼女にとって詩とは、100年先の私たちに宛てた手紙だったのかもしれません。
 いま私たちが誰かに――誰か“あなた”に――手紙を送るとしたら、どんな手紙を、どんなやり方で語ることになるのでしょうか。いま、ここでしかあり得ないことばが、いつか100年の時をこえて誰かに届くことがあるのでしょうか。翻訳者とは、手紙の窃視者です――しかし、翻訳者を起点に、ふたたびことばが、100年先の見ず識らずの宛名人へと解きはなたれるとするならば。そのときには、翻訳もまた一つの手紙であると言えるのかもしれません。それは――現在・未来に向かうのみならず、過去へと向けられた愛の手紙(ラヴレター)であるはずです。
 メールが即座に、SNSでの投稿が全世界に(しかし、誰に宛てて?)届いてしまう今、手紙は、回りくどく、あまりに遅く、アナクロニズムでさえあるのかもしれません。しかしその速度でしか、誰かに宛てて書かれるやり方でしか、伝わらないものがあると信じ、この特集をつくってみることにしました。
 あなたへ――小さな、ここでしかない私より。いまは宛先不明で戻ってくるとしても。

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Many of poems might have been written in a manner of addressing to someone. On the other hand, I suppose it is even essential for the poems not to be delivered rightly to the addressee. It is proven clearly by the fact that we are now reading (by accident) the poems which is addressed to *** (someone).

The poems are letters - which are destined not to be delivered to the right addressee, to be delivered not on time, to be delivered mistakenly, to be read by someone who does not have right to do so. “Manuscripts don't burn” - when I read this line in a Russian writer's novel, I remember a Czech writer, whose manuscripts were destined to burn by the will of the writer, however, they were made public by an insincere friend of his, and since then, up to now, we are reading the writer's works happeningly (by accident), even in this rim of world, Japan.

(By accident) - i.e. happeningly, not on time, without any right to do so. However, I think from here the inherent potential of the poetry emerges. In other words, the delivery not to the right addresser, the delivery beyond the expectation of the author. Maybe for that potential of poetry, the poets of 20th century - “the century of poets” - haven't given up their papers and pens even in concentration camps, in hopelessness, suffering from moroz and hunger. Russian poet Marina Tsvetaeva once wrote an impressive phrase: “To you - over a hundred years.” For her, the poetry might have been letters addressed to us, who live a hundred years after her.

By what letters, in what manners will we begin to exchange conversations with someone - some “you” - if we are to send letters now? The words that are possible only here and now - can they reach someone sometime, over a hundred years? Translators are peepers of letters. However, if the translators are to set the words free and send them again to someone un- known, over a hundred years, then, translation, too, can be called an act of sending letters. It must be a love letter not only to the time present and the time future but also to the time past.

In this era of e-mails and SNS, which have made possible to send instant- ly the messages that are addressed to the whole world (but to whom, to what “you”?), letters are too slow, too roundabout, even too anachronic a way of communication. I decided to dedicate this issue of “yumemirukenri” to letters, however, because I believe there is something we can- not exchange without the slowness of letters, without the way addressing to someone.

To you - from me, who is so tiny and is bound to here, letters are sent, no matter if they will be returned, marked “Address Unknown.”

(工藤順/Nao Kudo)

2019年7月7日日曜日

【イベント】7/19ペソア+ボサノヴァイベント@平井の本棚

(2019.10.01追記)
本イベントは終了しました。こちらから、イベントのダイジェスト動画をご覧いただけます!
https://hirai-shelf.tokyo/2019/09/15/%e3%83%88%e3%83%bc%e3%82%af%e3%82%a4%e3%83%99%e3%83%b3%e3%83%88%e3%80%8e%e3%82%b9%e3%83%8a%e3%83%83%e3%82%af%e3%80%8c%e8%b6%8a%e5%a2%83%e3%80%8d-%e3%83%9a%e3%82%bd%e3%82%a2x%e3%83%9c%e3%82%b5%e3%83%8e/


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『ゆめみるけんり』ではvol.1から、ポルトガル詩人フェルナンド・ペソアの作品「船乗り」と「アナーキスト・バンカー」をふじたみさとさんの翻訳で掲載しています。

この度、総武線・平井駅ちかくの本屋さん「平井の本棚」にて、ふじたさんによるペソア作品の朗読と、助川太郎さんによるボサノヴァの演奏を「サウダーデ/サウダージ」(郷愁)というテーマでゆるく結びあわせたイベントを開催します。

ポルトガルワインやパシュテル・ド・ナタ(エッグタルト)を片手に、わいわい話せるスナック形式のイベントです。初夏のひと時を、朗読とボサノヴァの響きとともに…。ぜひお気軽にご参加ください!


スナック「越境」ペソア×ボサノバギター
接合点:サウダーデ/サウダージ(郷愁)

ポルトガルとブラジル、国は違えど共通するのは憂いや失くしたものへの郷愁、心を掻き立てるような心象ではないかという仮説をスナックで検証。
リスボン市の地図や風景、ペソアの詩の朗読、ボサノバギターの演奏がクロスオーバーする中で、音楽や詩の内にあるサウダーデ/サウダージを感じとれたら……

◆イベント概要◆
日時:7月19日(金)19時半~ 
場所:「平井の本棚」2階
(総武線平井駅北口から徒歩1分→アクセス
参加費:3,000円(ポルトガルワインorエッグタルト付き)

◆ご予約◆
hirai.shelf*gmail.comにメール(*を@に変えてください)
Facebookページ(https://www.facebook.com/events/717238152079467/)、Peatixページにてご予約ください。
【7/17追記:予約先メールアドレスに誤りがありました。お手数をおかけしますが、こちらのページから予約された方は、上記の正しいアドレス宛に再度ご連絡いただければ幸いです。】

◆プロフィール◆
助川太郎(SUKEGAWA Taro)
米バークリー音楽大学ギター科卒業。クラシックギターを尾尻雅弘氏に師事。2003年ボサノヴァユニット「メヲコラソン」でメジャーデビュー。ブラジル音楽を中心に南米フォルクローレジャズ、クラシックなど、様々な要素を取り入れたギター独奏コンサートを日本全国で展開している。
http://www.tarosukegawa.jp


ふじたみさと(FUJITA Misato)
広島育ち。「平井の本棚」の日曜店番。
『ゆめみるけんり』ではF・ペソアの作品を英語から翻訳。きっと平井に合うペソアの脱力感が伝わればと思います。

平井の本棚
総武線・平井駅にある本屋さん。2018年オープン。https://hirai-shelf.tokyo/


***
yumemirukenri holds an evening with reading of poems of Fernando Pessoa by FUJITA Misato (yumemirukenri) and Bossa Nova guitar performance by SUKEGAWA Taro.

Date: 19 July (Fri) 730PM-
Venue: Book Shop "Hirai no Hondana," 2nd Floor
(A minute walk from JR Hirai sta.)
Fee: ¥3,000 (incl. one glass of Portuguese wine or a pastel de nata (Portuguese egg tart))

For reservation, please contact via
- e-mail (hirai.shelf*gmail.com) (change * to @)
- Peatix (address shown later)

2019年7月3日水曜日

重力/Note公演「Love Junkies」に翻訳で参加

重力/Noteの公演「Love Junkies」に工藤 順(ゆめみるけんり)が翻訳で参加しています。

原作は、アルフォンソ・リンギス(Alphonso Lingis)の『信頼』(Trust)の中の掌篇「Love Junkies」です。

仙台・北九州・盛岡をめぐる公演。ぜひお立ち寄りください。
劇場限定パンフレットも販売中です(80部限定版¥500、簡易版¥400)。


パンフレット(限定版)より序(工藤 順)

このテクストは、アメリカの旅する哲学者、アルフォンソ・リンギスが書いたテクスト「Love Junkies(ラヴ・ジャンキーズ)」を、重力/Noteの公演のために訳し下ろしたものです。基にしたテクストは、リンギスの“Trust” (U. of Minn. Pr., 2004)に所収の版ですが、Performance Research誌(9(4), 2004)に所収のテクストも参照しています。既訳には『信頼』(岩本正恵訳、青土社、2006)所収のものがあります。 
テクストを一読したときに感じたのは、異様な“若さ”でした。リンギスは1933年生まれですから、このテクストを執筆したのは彼が73歳(!)のとき、ということになります。「年相応」などという言葉を吹き飛ばしてしまうような、鮮烈なテクスト。翻訳もその若さに追いつくべく、何度も音読しながら、改訂を重ねました。また、公演を前提とした翻訳でしたので、演出家や俳優からフィードバックをもらいながら、「1度で意味が伝わるか」ということを意識して公演まで何度も改訂を重ねたのも、また得がたい経験でした。 
雑誌に掲載された版は、テクストのなまなましさの点で、単行本版にまさります。今回はたまたま雑誌版から先に翻訳し、のちに単行本版と突きあわせて翻訳を行いました。単行本版のテクストにあわせていく作業のなかで泣く泣く切り捨てた、輝くようなテクストもありました。 
「LGBT」や「ホモセクシュアル」という言葉をいちど脇において、ひとがただひたすらに「ひと」でしかないような、無条件で絶対的な愛の経験に身をゆだねてほしいと思います。




◆ Information ◆
世界中を旅したり異国に住んで思索することで知られる哲学者アルフォンソ・リンギス
彼が出会ったセクシャルマイノリティの犯罪者カップルを描いたテクスト『LOVE JUNKIES』を演劇化します

〈愛〉と〈信頼〉

いかなる苦難の状況においても、人間が求めないではいられない精神の身振り

その根底に流れる情動を、地球規模で繰り広げられる生命の営みと繋がりを持つものとして考察したテクストをもとに、いまの私たちの生存感覚と向き合う〈場〉をひらく演劇として皆さんにお届けします

また遠距離間での共同作業の可能性を模索する〈リモート稽古〉や、上演予定各地で稽古やリサーチを重ねて移動性と場所性を活用する〈旅する稽古場〉といった創作プロセスの試みにもご注目ください



『LOVE JUNKIES』

原作:アルフォンソ・リンギス(『信頼』より)
翻訳:工藤 順

演出・舞台美術:鹿島 将介

出演:小濱 昭博



公演日程
[仙台公演]6月16日(日)〜23日(日)@せんだい演劇工房10-BOX box-1
[北九州公演]7月5日(金)〜7日(日)@枝光本町商店街アイアンシアター
[盛岡公演]7月16日(火)〜17日(水)@いわてアートサポートセンター 風のスタジオ

詳細は重力/Noteウェブサイト、SNSにて
twitter: @Note1069

2019年6月9日日曜日

【イベント】Language Beyond(スペシャル回)

あなたの公-差-転(西荻窪)で2ヶ月に1度開催してきたブッククラブLanguage Beyondが、1周年を迎えます。そこで、6月にスペシャル回として、ふだんと違う試みをしてみます。

初めての方も大歓迎です!




6月30日(日)16:30-18:30
場所:あなたの公-差-転→Access
参加費:無料
持ち物:テーマ【変わる?/Change(s)?】から思いつく本を1冊お持ちください。文学(フィクション)がベストですが、何でも大丈夫です。



このブッククラブでは、①文学(フィクション)を読むこと、②参加者の持ち回りで本を選ぶこと、③文章を読んで感じた一人ひとりの感覚を大切にすること、④多様な意見を認めあうこと…などを大切にしています。

今回は、参加されるみなさん全員で、本を1冊ずつ選んで持ち寄ります。一つだけ、本のテーマを決めます。テーマは→【変わる?/Change(s)?】です。

〈変わる〉という感覚。〈変わらない〉という感覚。わたしたちは、今の自分の身体や感覚というあいまいな立脚点に立ちながら、世界や時代、自分自身や他者をながめます。そして自分をとりまくものや自分自身が、変わったこと・変わらないことに気づきます。

〈変わる〉ことは、時には未知の世界へのあかるい希望を抱かせるものでもありますが、時には自分自身や他者、周りの世界に変化を強制する、恐ろしい力にもなりえます。あなたにとって〈変わる〉ことは、どんな感覚をもたらすものでしょうか。

子どもの頃から、変わったもの/変わらないものはあるでしょうか?
自分をとりまく世界は、変わったでしょうか? 変わらないでしょうか?
これからの世界はどう変わるのでしょうか? あるいは、どう変わってほしいと思いますか?
いまここにいる〈わたし〉から変わりゆく世界/変わってしまった世界に向けて、あるいは世界から〈わたし〉に向けて、どんなことばが投げかけられるでしょうか?

これはヒントの一例にすぎませんが、こんなことに思いをはせながら、本を紹介しあってみませんか?はじめての方、ちょっとお試しで参加される方ももちろん大歓迎です!



ご参考に、今までのLanguage Beyondの様子です。→http://kosaten.org/ja/language-beyond/

2019年6月8日土曜日

【掲載】デザインのひきだし37

今週発売の『デザインのひきだし』37号「活版・凸版印刷」特集に、美術家・田口賢治さんのインタビューが掲載されています。


そのお話のなかで、昨年11〜12月にかけて開催したイベント「[ _ ] UNDER BAR」のために田口さんと「ゆめみるけんり」が共同制作した活版作品について取り上げていただきました。



『デザインのひきだし』は毎号贅沢すぎる造りで、ものすごくリスペクトしています。このような媒体に登場できたことはたいへん光栄なことでした。毎号売り切れ必至とのことですので、お近くの書店で発見されましたら、ぜひお買い求めください。
グラフィック社HP:http://www.graphicsha.co.jp/detail.html?cat=4&p=39218

*こちらは活版印刷所の見学記です→https://droitdeyumemir.blogspot.com/2018/11/letterpress.html


>>『デザインのひきだし』から『ゆめみるけんり』を知ってくださったみなさまへ。
詩と生活のzine「ゆめみるけんり」は、こちらの書店さんで扱っていただいています(書店さんにより、通販在庫もあり)。kindle版もあり。→入手方法
また、『デザインのひきだし』で紹介された活版作品についても、頒布します。ご希望がありましたら、下記アドレスまでお問い合わせください。
droit.de.yumemir*gmail.com (*→@に換えてください)

2019年4月20日土曜日

【イベントレポート】3/23「ゆめをてわたす vol.1」

3月23日(土)、西荻窪の忘日舎さんで、2つの詩誌「ゆめみるけんり」と「て、わた し」共催のトークイベント「ゆめをてわたす」の第1回を行いました。

私たちは、忘日舎の伊藤さんにご紹介を受けてはじめてお互いの存在を知り、イベントの1ヶ月前に初対面、なんとな〜く似た雰囲気を感じるな…というところから、今回さっそく忘日舎さんでイベントをさせてもらうことになりました。

お互いの熱意が爆発し、主催の私たちにとっても大変刺激になる会でしたし、事後アンケートでもたくさんの嬉しい感想をいただきました。当日ご参加いただいた方、また興味はあったけれど参加はできなかった方、密かに応援してくださっている方…みなさまに感謝を申し上げたいです。ありがとうございます。

当日は20名ほどの方にお越しいただきましたが、お伺いしたところ、「て、わた し」を知っている人も、「ゆめみるけんり」を知ってる人もそれなりにいらっしゃって、びっくりしました。雑誌をつくっていても、実際に買ってくれる方の顔を見ることはないので、嬉しい驚きでした!

それでは、当日のトーク内容を簡単にまとめて、ご紹介します!





ゆめをてわたす vol.1

3月23日(土)15時〜17時@忘日舎(https://www.vojitsusha.com
出演者:山口勲(て、わた し)、工藤順・藤田瑞都(ゆめみるけんり)
*「て、わた し」:http://tewatashibooks.com

◯「ゆめみるけんり」のつくり方

(工藤)
  • 「ゆめみるけんり」は、2016年冬にスタート。①社会に出た後に、文学とのつながりを保ち続ける方法+②大学で出会った友人と別れない方法を考え、zineをつくることに。「ゆめみるけんり」は、バシュラールの言葉。「ゆめ」とは詩とか、文学のこと。社会のなかで「ゆめ」を守っていくための実践としてのzine。
  • メンバーはその時々変わるが、だいたい10人前後のメンバー。ピンと来るテーマを選び、「まえがき」を書いて、みんなに投げる。リアクションとして色々な作品が来る(翻訳や創作)。
  • DIYを大切にしている。InDesign講座に通って学んだり。
  • ぼく自身の詩との出会いについて。詩の本だと初めて自覚して買った本は『パウル・ツェラン詩文集』(飯吉光夫訳、白水社、2012)。ユダヤ人の痛みからスタートして書いた詩人。2012年に発行され、2011年の震災の後に詩は可能か?という問題意識から刊行されたように思う。後から思い返してみると、人間がどうしようもできない巨大な現実の前で、詩でも何かしらできるんだ、と実感させてくれたのがこの詩集かもしれない。詩は日常と全然違う、超越したものだが、現実に対して何らかの力を持つし、詩にしかできないこともたくさんあると気付かされた。
(藤田)
  • 社会人でありつつ、書くこと。文学は自分では重要なのだけれど、会社で詩の話をすることができない。詩の言葉は、自分の会社ではふさわしくないと感じる。でも、仕事と書くことを一つの延長線上に置きたいと考えている。zineで何か発表することを単純に楽しんでいる。

◯「て、わた し」のつくり方

(山口)
  • 小学生の頃から詩を書いていた。大学3年でポエトリーリーディングに出会う。詩の朗読会やワークショップの企画。自分でも朗読したり、ラッパーとバトルしたり、詩を投稿したり。詩の世界で幅広く活動しています。詩と短歌、俳句のジャンルを交えていく詩歌梁山泊のWEBマガジン「詩客」(http://shiika.sakura.ne.jp)の立ち上げを手伝ったりもしました。
  • 2008年、ワークショップについて下調べする中で海外の詩と出会い、自分で翻訳した難民の詩などをブログで公開しはじめる。そんな中、イギリスの詩人Warsan Shireが、ビヨンセのアルバム“Lemonade”で大きく取り上げられる。日本でもちゃんと紹介されるんじゃないか?と期待していたところ、誰もやらず→じゃあ自分でやろう。
  • 海外の「詩」は紹介が少なく、どんな方法がいいか考えた結果、日本の詩と海外の詩とを組み合わせてみることに。翻訳したい詩人は、海外でも人気が出てきつつある詩人、80〜90年代に生まれた同世代の詩人たちで、第一線で活躍し始めている詩人。そこに、日本の同世代詩人をぶつけてみる。1号は「女性詩人」特集で、LGBTの詩人ともからめつつ6人取り上げて紹介しました。生きづらさを超えて、生きてゆくために必要な詩はあるということ、これを繰り返し伝えたい。
  • 作品や訳者の探し方。①アメリカにはウェブマガジンの文化があって、300種類くらいのウェブマガジンがある。Sundress出版社の“Best of the Net”という毎年の特集でマガジンを探したり、気に入った書き手を拾っていく。②Lambda Literary FoundationのLammy賞(LGBT文学賞)、レズビアン、ゲイ等それぞれのセクションでポエトリー、フィクション、ミステリー等のジャンルがある。③「poetry」でフィード登録しておいて、飛び込んでくるニュースを読む。④昨年出版された「ヒロインズ」から、広がりもあった。英語以外の言語については、空き時間に論文検索サイトで探し、大学にメールで問い合わせて、交渉したり。
  • 装幀は浩子さん。2、3号から2人のイラストレータの方からも協力。

◯「生きづらさ」ということ

  • (工藤)山口さんは「生きづらさを超えるための詩」と言っていたが、「ゆめみるけんり」も個人的なところから(通勤電車、会社の苦しさ)ではあるが、生きづらさの感覚を共有していると思う。
  • (藤田)研究者になるという選択肢もあったかもしれないが、会社に入ることを選び、毎日暮らしていく。そうすると、結果として自分の中で文学・詩の領域が小さくなっていった。「ゆめみるけんり」では、おそらくみんなそういう感覚を共有している。それでも詩の領域を守っていきたいと思う。それがzineの始まりだった。
  • (山口)日常生活が、やりたくないことに侵食されていく感覚ですね。その中で、今までやっていたことを守っていくこと。もっと単純な話で言えば、ぼくら(山口さん・工藤)は身長180センチくらいある。日々電車に乗って感じる「生きづらさ」がある。電車での呼吸のしづらさとか。
  • (工藤)つり革が頭に当たるとか。銀座線が狭いよね、とか。些細なところから生まれるのが生きづらさ。

◯ぼくらにとって翻訳は

  • (山口)2016年11月に「て、わた し」を創刊。その前から構想自体はあったが、同人誌のつくり方がわからないし、ガツンと来るコンセプトを自分一人ではつくれる自信もなかった。自分が書く詩では嘘をつけないから、自分自身をブランディングすることって難しい。それなら、今は翻訳をメインにして、海外の詩人も日本の詩人も紹介する媒体を、と考えてつくったのが「て、わた し」。
  • (工藤)「ゆめみるけんり」のきっかけの一つに、研究者が詩を翻訳しても発表できる媒体がないということがある。大学では、周りにいろいろな言語をやってる人がいて、翻訳をしている人もそれなりにいたが、発表の糸口がつかめない。それなら自分で発表できるための媒体をつくろうと思った。
  • (藤田)翻訳との出会いについて考えると、卒論で引用した多和田葉子さんの言葉が思い浮かぶ。「この世界のほとんどの言葉はまだ翻訳されていないか、誤訳されているかのどちらかだ」(『エクソフォニー』)。私たちは日本語で話しているが、100%意思疎通できてはいない。言葉という記号を使うことは、翻訳的な行為。翻訳的行為は、一人ではできず、他者が必要。他者とのやりとりの中で、ことばが新しい意味・使い方を産んでいくという確信がある。
  • (工藤)誠実に向き合うほどに、翻訳なんて不可能だという考えに陥ることはよくある。海外の伝統的な詩は、形式的に韻律があり、韻律(リズム)と内容とが相まって作品をなす。そのまま日本語にもってくることは絶対できない。ある時はリズムを重視した翻訳、内容を重視した翻訳、韻文を散文にしたり、散文を韻文にしたり。それぞれは一回ずつの試みに過ぎず、一つの正解はない。翻訳はできないと思う一方、できなくていいんだという考えでやっている。その時なりに、著者が誠実にテキストに向き合った結果が「ゆめみるけんり」のテクスト。
  • (山口)リズムと意味が、詩のすべてだと思います。自分はこう見てるということを提示するため、誤読するためにやっている。ずっと詩を書き、朗読をやってきた中で、翻訳と出会った。翻訳で良いことは、自分が使ったことのない言葉を使うことができること。リズムの問題で、意味は同じでも音が違う言葉を選んだり、自分では使わない四字熟語を使わなきゃいけなくなったり。時には俗語や汚い言葉も使わなきゃいけない。こうやって、自分の使える言葉が広がっていく。詩作とは別に考えているが、使える武器が増え、自由な気がしてくる。

◯朗読の時間

  • (藤田)吉田加南子さんのテクストを読みます。「ゆめみるけんり」4号の特集は「手紙」。私は吉田さんに大変影響されていて、詩に対して考えていることは、だいたいこの人が言っていると感じます。今から読む詩は、吉田さんに衝撃を与えた詩。人が何かを書く時、書く私というのは自分がイメージする自分ではなく、たくさんの私以前の人たち(過去の詩人や存在しない人たち)、つまり「不在の世界」が反映された存在となっている。書くことによって、自分の中にいる他者が見つけられる(「ほどかれていく」)。書かれた言葉は、不在の世界からの合図、それは「流れ星」である。「手紙」というテーマのイメージは、不在の世界からの「合図」に対して返事をしていくということ。そして、これからも返事をしていきたいという思いがある【朗読:デュブーシェ「流れ星」+吉田加南子さんの解説(『フランス詩のひととき』より)】
  • (工藤)配布したzineの「翻訳のためのエクササイズ」から朗読します。これは、ライナー・マリア・リルケの詩のドイツ語原文と、そのパステルナークによるロシア語訳を、それぞれ工藤が訳したものです。翻訳は本質的には無理だ、ということを実作として経験した翻訳の作業であり、参照点。このテクストたちは、翻訳によって関係性を持っているが、ここに生まれた日本語はいったい誰の詩?と考えること。参考になる試みとして、vol.3に載せた藤澤大智くんによるイタリア詩の翻訳は、押韻箇所の母音を揃えて翻訳しているとのこと。【朗読:リルケの詩»Der Lesende«(本を読む人)のパステルナークによるロシア語翻訳«За книгой»(本に向いて)をロシア語で。】
  • (山口)これが詩だなと思う詩を読みます。自分が思っているものと人が見ていたものが浮かび上がり、結びついて、また新しい自分・言葉が浮かぶ。生き様を写し取った作品と生きていることそのもの、生きていることそのものとその記憶は固く結びついていて、どちらももう一方に変わり得る。詩を読んでいると、ときどきそういう奇跡のような詩に出会うし、自分もそういう詩を書きたい。紹介できる場がどんどん増えればいいと思い、「て、わた し」をやっています。【朗読:エリザベス・ビショップ「詩」(山口さんの翻訳)】


◯「サミズダート」、広げること、アマチュアであること

  • (工藤)「ゆめみるけんり」は、書店で売ることに意味があると思っている。いろんなところに間違って配達されてほしい。消費者的な態度が嫌いなんです。「欲しい→ポチる→到着」では、単調で面白くない。好きな本屋さんに並べてもらい、本屋が好きな人がふらっと買ってくれるのが嬉しい。反時代的、アナログではあるが、そうじゃなければ出会えない人はいて、それがぼくらには大切。入手しにくいとは思うが、わざとしている部分もあり、広げれば広げるほどいいものでもないと思う。届けたい人がいる。潜在的に届いてほしい人もいる。その距離で、その誰かに届けばいい。
  • (藤田)「地下出版」的な気持ちを持ってやっています。草の根、アマチュア感を大切に。
  • (工藤)「zine」という言葉はロシア語で通りが良くなく、ロシアの友人には「サミズダート(самиздат;ソ連時代の地下出版のこと)」をやっていると説明することがあり、そうすると政治的なニュアンスが加わるが、それはそれで面白い。国によって、自費出版についてのイメージはいろいろある。「て、わた し」は、アメリカの由緒正しいzine文化に目配せをした、明るい雰囲気を感じる。「ゆめみるけんり」の発想は、ソ連の強制収容所あたりからスタートしているので、根暗かもしれない。「反逆したい」「対抗したい」、反抗心が常にあると思う。アマチュア感という話で言えば、プロの人にお願いすることも考えられるが、極力自分たちの手でできることは全部やろうと思っている。自分のできることが広がり、楽しい。
  • (山口)サミズダートという言葉がメジャーになってほしいね。かっこいい。自分の場合、反体制というより、オルタナティヴ的なものが近い。当然排除はしないけれど、周縁的(マージナル)なものに親和性がある。マージナルなものとは、体制でも反体制でもなく、ただ生きているところが好き、みたいなところ。とりあえず生きていくこと。

◯本屋さんについて

  • (工藤)売り込むとき、最初はすごく緊張した。でも売り込みに行くと、本屋さんも興味を持ち、深い話ができることが多い。本屋さんの違う顔を見れるのも楽しい。新しい読者にも出会える。
  • (山口)楽しいけれど、最初はすごく緊張する。本屋さんは話やすい感じがない。忘日舎の伊藤さんは伊藤さんの目線からアドバイスをくれ、ためになります。本についてもっと知ることができて嬉しくなる。
  • (藤田)名刺代わりで「ゆめみるけんり」を持って行ける。その結果面白いことがいろいろ起きて、例えば平井の本棚(https://hirai-shelf.tokyo)という本屋で店番をやることになった。店番をやって、お客さんが求めることなども見えてきた。同人誌をきっかけに、ちょっとずつ自分の生活が変わってきていて、それが楽しい。

◯お金の話

  • (工藤)zineにいくらをつける?という問題がある。最初は300円からの投げ銭にしてたが、印刷に800円かかっていたので、売れるたびに赤字だった。今は考えを変え、かかった分のお金は請求してもいいよな、と考えている。資本主義が良いとは思っていないが、その枠組みの中で消費財を作って売るという経験、自分のつくるものに対して値段をどうつけるか、いくらなら買ってもらえるのかと考え、勉強になる。
  • (山口)本屋さんの値付けは、高めにつけてくれて嬉しい。安すぎると手に取ってくれないこともある。自分たちが何者かは自分でもわからない。
  • (藤田)水中書店さんから、継続可能な値段についてアドバイスをもらった。当初念頭にあったのは、東海晃久さん(ロシア文学翻訳家)の試み。kindleで販売している本(例えば『殺字者倶楽部』)が、当初300円くらいで設定されていて、その態度がかっこいいので、真似してみた。zineを出すにあたって、安すぎると良くないというのは、始めてから分かったこと。
  • (工藤)「ゆめみるけんり」のkindle版は300円にしている。電子書籍を出したのは、勉強の一環で、スキルを身につけたかったから。やってみたら、案外なにもできない。kindleは基本的にはベタ打ちのテキストで、自分たちでコントロールできる部分が少ない。端末次第で変わってしまい、自分たちで製作してるという感覚はあまりなく、クオリティが保証できない。なので紙版より安くしている。テキストが読めればいいという人向け。

◯サイズについて

  • (山口)浩子さんがもともとデザイナーで、転職をする頃に「て、わた し」をはじめた。本人的にも、トータルでアートディレクションをやりたいという気持ちがあった。出版物になったのは偶然で、もしかしたら立体になっていたかもしれない。「ゆめみるけんり」の判型はどうやって決めた?
  • (工藤)1号を始める時に会議し、本棚から好きな本を並べてみた。A4はちょっと鈍くさいなとか、A版やB版みたいな枠にはまりたくないと思ったかもしれない。それで、正方形か、新書サイズかに絞った。新書サイズは出版社によって違っていて、それも面白い。
  • (藤田)cuon(http://www.cuon.jp)の本や土曜社(https://www.doyosha.com)のマヤコフスキー叢書など、軽いソフトな本が好き。ポケットに入るサイズが大事。
  • (工藤)満員電車のなかで、ナイフを忍ばせるように、詩の本を忍ばせる。
  • (山口)サイズにもっと気を使えば良かったな、と思っている。将来的にはもっと考えたい。


◯これからの話

  • (工藤)翻訳は、研究者の実績にならない。だから後手に回ってしまい、ロシア研究では、海外のロシア研究ではスタンダードになっている文献が日本語になっていないことがある。日本では、研究者の立場自体が危うい。明日の生活もわからない時に、翻訳なんてできないという状況がここ数年あると思う。翻訳の体力もない、媒体もない。それを考えた時に、「ゆめみるけんり」を超えた未来の話として、若い、博士論文を発表する前の研究者に書いてもらい、ライトな翻訳シリーズを出せないか?と考えている。今までそういうのはなさそう。今は、出版社でなくても手軽にスタートできる。原稿さえ集まれば誰でもつくれる。色々なやり方がある。アカデミズムでは思いつけないことを、こちらから提案する。文化を生き延びさせていくための方策を探りたい。そのための実験の一つとしての「ゆめみるけんり」。これからどうなるか分からないが、研究者にとっても、文化にとっても、利益をもたらせるような仕組みを考えてゆきたい。
  • (山口)翻訳は、一番の読みだと思っている。だから、発表媒体がないことに驚いた。
  • (工藤)大学卒業して研究者になる道もあったが、お金がなかったし、ロシア文学をつづけて社会に返せるものがあるのか?と自信がなくなった。それならお金を稼いで社会に寄与してみようという経緯。zineづくりや、山口さんとの出会いをつうじ、文学を通して役立つための方法っていろいろある、学校の中で考えていた以上に、どんなやり方だってあるなという実感が一番大きい。文学を通じて社会とつながる、文学を社会の中で生き延びさせていくことをめぐって、今後もチャレンジをつづけていきたい。
  • (藤田)本屋さんで店番をやっていて、イベントスペースの活用をしていこうと考えています。仕事を辞めて、本屋さんの運営に注力していこう、拠点をつくろうという感じで考えている。
  • (山口)文学賞をつくりたい。「生きづらさを超えて生きる」実践に対してなにか表彰できるもの。文学のそれぞれのジャンルについてはいろいろ賞はあるが、ある事についてピンポイントで書かれたことに対して、与えられる賞がないという印象。LGBT文学賞をつくる話があったが、もっと広いジャンル(“生きづらさを超える”)でつくれないかな?と考えています。千葉詩亭、国立のポエトリーリーディングなど、今やっている取り組みをもっと頑張って、自分の声で語る人をもっと増やしていきたいと思う。他のzineの人も招いて、zineをつくるって楽しいということを伝えていきたい。

◎観客の方の感想から

  • 生きづらさの中で倒れない道標を見い出すことに共感しました。
  • 学問的教養+思想+心意気+行動力が源なのだなと感じました。子育てに役立たせていただきます。
  • 言葉をつむぐこと、翻訳をすることといった生きていくことに関わるような大きな話題から、zineで出版するうえでの問題といった具体的な話題まで取り上げてくださり、とても参考になりました。
  • 小さなものが存在していると関わり方を考[え]ざるをえないし、小さなものが好きなので、存在していて欲しいです。







参加してくださった皆さま、ありがとうございました!またどこかでお会いできることを心待ちにしています。

2019年2月21日木曜日

【トークイベント】3/23「ゆめをてわたす」@忘日舎

ここではない向こうへの言葉を、いまここから。

詩と生活のzine『ゆめみるけんり』と、アクティヴに活躍される詩誌『て、わた し』。
翻訳詩をめぐる2つのzineがはじめてコラボし、トークイベントを行います!

ぼくらにとって詩とはなにか? なぜリトルプレスをつくるのか? 2つのzineのつながるところ、つながらないところ。
『て、わた し』発行人の山口勲さんと、ゆめみるけんりの工藤+藤田で、そんなことをお話ししながら、来場してくださるみなさんともつながることばを探したいと思います。



* *

ゆめをてわたすvol.1 〜翻訳と創作のリトルプレス発行人の時間〜

日時: 3/23(土) 1500〜1700
料金: 2000 円(Drink、zineこみ)
会場: 忘日舎(西荻窪駅北口、西友のなかを通り抜けた反対側の出口右手側にあります。)
出演者:工藤順 藤田瑞都(ゆめみるけんり) 山口勲(て、わた し)

ご予約は下記リンクから。
http://ptix.at/dqWG3o
https://www.facebook.com/events/252009999020954/
メールでも受け付けています。
droit.de.yumemir*gmail.comまで「お名前・人数・連絡先(電話、メール)」をお知らせください。



イベント概要:

「ゆめみるけんり」と「て、わた し」
海外の詩を意欲的に翻訳してきた私たちは
出版とは異なる仕事を持ちつつ
リトルプレスの出版を行なってきました。

私たちは日常に追われながらも
異なる言葉を日本語へと読み解き
または創作を世に問うことで
社会と生のつながりを再発見しています

リトルプレスを取りあつかう書店 つまり社会を通して
親しい言葉 つまり生を営む人として私たちは出会いました
そしてこれからも出版をひとつの手段にして
あらたな社会と生の循環を行おうとしています

第一回は船出です 生活や詩・本をつくることを話しつつ
リトルプレスを通じた創作の可能性についてさぐります



出演者プロフィール:

山口 勲(やまぐち・いさお)
1983年東京生まれ。二十一世紀のはじめからポエトリーリーディングを始める。
朗読会 千葉詩亭・くにたちコミュニティリーディングを始め、各地での共催。
日本の詩と世界の詩を対バンのように紹介するリトルプレス「て、わた し」を発行。
次年度の目標は参加するイベントには走って行くこと。
 *『て、わた し』→http://tewatashibooks.com

工藤 順(くどう・なお)
1992年、新潟生まれ。詩と生活のzine「ゆめみるけんり」をいちおう主宰。
ロシア文学・文化をフィールドとし、昨年、プラトーノフという作家の訳書を出版しました。
ロシアに生まれることができなかったため、今いる場所で自分の居場所を探しつづけています。
自分にとって詩はどういう言葉なのか、考えることが「ゆめみるけんり」につながっているような。

藤田 瑞都(ふじた・みさと)
1992年、広島生まれ。
ゆめみるけんりを通じて、幾度か翻訳や創作、朗読を行いました。
「わたくしごと」であることばとの向き合いについて、何か発見があればと思います。



会場について:

忘日舎 https://www.vojitsusha.com
古書と新刊を扱う書店として2015年秋に東京・西荻窪でオープン。店主は出版業界で編集、校正業務などを経て、現在は小さな書店の新しいあり方を日々模索中。

2019年2月11日月曜日

【出店のお知らせ】お座敷一箱古本市(4/14、浅草)

浅草のReadin’ Writin’さんで開催されているお座敷一箱古本市に、「ゆめみるけんり文庫」として出店します。
当日は「ゆめみるけんり」のほか、ゆめみるけんり寄稿者が持ち寄る古書を販売予定です。ご来店、お待ちしています!

2019年4月14日(日)12時〜18時
@Readin’ Writin’さん(http://readinwritin.net
アクセス:東京メトロ銀座線・田原町駅から徒歩3分くらい


yumemirukenri is going to have a tiny booth at old book market in Readin' Writin' book store.
We sell old books contributed from members of yumemirukenri besides for yumemirukenri vol.3.

Date: 4 Apr 2019, 12AM-6PM
Venue: Readin' Writin' book store (Asakusa)
Access: 3 minutes walk from Tawaramachi sta. (Tokyo Metro Ginza line)

2019年1月4日金曜日

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