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2021年7月7日水曜日

メンバーズ(vol.5)

2021年秋刊行予定の『ゆめみるけんり』vol.5メンバーの紹介です。

◆名前
プロフィール/今回のテーマ「私からはじめる」から思いつく作品1つ/ひとこと/SNSアカウント
の順に並んでいます。

丸数字は、①「わたし」にとって一番大切なこと・瞬間、②「ゆめみるけんり」との関わりについて、③今回の寄稿作品の簡単な解説。

◆あおきりょう
HIV+で特定不能の広汎性発達障害持ちのゲイのおじさん。横浜DeNAベイスターズ、音楽、積ん読、週末銭湯、人間観察を好む。詩はスローペースで生み出すタイプ。/DREAMS COME TRUE「何度でも」/①そのときの気持ちについて他者に感化されずに正直であることです。②note「いま寄り添うためのことば by ゆめみるけんり+て、わた し」にて『この怒りを奪うな』を投稿しました。③2020年のコロナ禍から2021年2度目の緊急事態宣言・再延長の中で自分が感じたことを怒りが先行しながらも述べています。/twitter: @bluezlee_/note: bluezlee

◆秋本佑〔あきもとたすく〕
1988年生。言葉に興味があります。/中島みゆき『はじめまして』(1984年のアルバム)/いくつかの運命的な出会いによって、『ゆめみるけんり』に導かれたような気がしています。前号までは読者の立場でしたが、今号には寄稿者として参加できて嬉しいです。締めくくりの号に寄せるにはやや寂しい雰囲気の詩だったかもしれませんが、月を見上げる人間の姿に惹かれて訳してみました。

◆歩祐作〔あゆみゆうさく〕
一九九三年生まれ。オランダ国ヴァーヘニンゲン大学開発学修士課程卒。『ティーンズライフ』、『半熟卵のエンジン』(共に講談社)/ニーナ・シモン「Ain’t Got No, I Got Life」/閉じた、固まった社会であり、一年でした。だからこそ、窓を開けて、陽光に身体と心をほぐして、もう一度会いに行きたいのです。だれも遠足で行かないくらい遠く、ぼくらの他者、理解できない異星人に。

◆遠藤のぞみ〔えんどうのぞみ〕
1992年生。新潟県出身。司書。/ボルヘス「ボルヘスとわたし」(『創造者』所収)/はじめまして。遠藤のぞみと申します。小説を書かせていただきました。といっても、小説として成立しているかも不安な、拙い文章で組み上げられたものでとても恐縮なのですが、わたしの小説を読んで、あなたが幾ばくかのものを受け取っていただけたら、うれしく思います。よろしくお願いいたします。

◆奧村文音〔おくむらふみね〕
東京外国語大学博士課程在学中。フレーブニコフ及びロシア・アヴァンギャルドにおける“有機的文化”を研究。/A.スタンチンスキー「ピアノソナタ第2番」/「ゆめみるけんり」初参加です。ロシアの詩人フレーブニコフ(1885‐1922)の随想風の作品を訳しました。生涯にわたり、各地を文字通り彷徨い歩いていた彼の「わたし」の原点は、やはり故郷アストラハンをめぐる記憶に繋がっていきます。そして、この地でカスピ海に流れ込むヴォルガのように、滔々と流れるような独特の文体も、彼の散文の魅力の一つです。

◆Kamila Lin〔かみらりん〕
Я не считаю себя иллюстратором но творчество определенно живет в моей душе. Я очень люблю наблюдать, чувствовать и пропускать через себя этот мир, трансформировать и раскрыть его в своем творчестве. Без наблюдателя нет этого мира и мы ответственны за то, какой мир создаем. Я есть начало. Название этого тома навеяло мне воспоминания о фильме «I Origins» это произведение о бессмертии души, каждый конец это только новое начало. 〔自分がイラストレーターだとは思っていないけれど、創作することはたしかに私の心の中に息づいている。この世界を観察したり、感じたり、自分の中を通過させること、そして作品の中で世界を変形し、ほどくこと──そういうことが私はとても好きだ。/観察する誰かがいなければこの世界は存在しないし、その世界がどう造られてあるかということに責任を持つのは私たちだ。私とは、始まりだ。今回の特集からふと思い出したのは、『I Origins』という映画。魂の不滅にかんする作品。どんな終わりも、それはただ新しい始まりでしかない。〕(翻訳:工藤順)/instagram: @kamila_lin_

◆木下晴世〔きのしたはるよ〕
1948年生まれ。アフマートヴァの翻訳をしています。今回はパステルナークを訳してみました。/ショスタコーヴィチ「チェロ・ソナタニ短調 op.40」/パステルナークの詩について、アフマートヴァは、天地創造の六日間だけしかなく、人間がいないと言っています。しかし彼の詩を満たしている圧倒的な幸福感は人間あってこのそのものですから、表現されているのは歴史以前、主客分裂以前の無垢な世界感情としての喜びであり、目の覚めるような鮮烈な印象もそこからくるのだと思います。

◆工藤順〔くどうなお〕
1992年生まれ、ロシア語翻訳労働者。『チェヴェングール』刊行を目指して。/ウラジーミル・マヤコフスキー「ズボンを履いた雲」/最近、身体との付き合い方が変わる二つのきっかけがあった。一つは、漢方を試してみて、身体にあった小さな不具合がすっと楽になったこと。もう一つは、ずっと憧れていたワンピースやスカートを着て歩いてみたこと。どちらも私の輪郭をすこし揺らすような経験だった。/https://junkdough.wordpress.com

◆倉畑雄太〔くらはたゆうた〕
1992年に生まれました。/ティム・インゴルド『メイキング』/いつも「ゆめみるけんり」の頃には、翻訳なり創作なりの用意があります。不思議なシンクロか、ちょっとした焦燥感か、良いサイクルができています。これからもこの運動が続くのか、消えるのか、分かりはしないけれど、また別のものの胎動を待ちながら生活を続けます。

◆ことたび
翻訳文学同人雑誌「翻訳文学紀行」編集長、演劇ユニット「移動祝祭日」作家。「ことばのたび社」として、外国語×物語で生まれるちいさな贅沢を届ける活動をしています。/メルヴィル『書記バートルビー』/自分で作った食事と十分な睡眠、本を読んだり映画を観たりする時間。この三つは、自分の生命活動に必要不可欠なものだと思っているのですが、そういう人って少数派なんでしょうか……? ええ、たとえ少数派でも結構。わたしはこの軸が揺らがないように生きていくのみです。/note: kototabi

◆小林大志〔こばやしだいし〕
92年生まれ/志村ふくみ『晩禱—リルケを読む』/工藤とは大学一年の時に知り合った。もう10年たつ。世の中に背をむけて暗い自室に閉じこもるわけでも、「軽さ」に惹かれてあくがれ出でてそのまま帰らぬ人となるわけでもない、つまりは戦闘的な生き方、自分の感性と社会とのせめぎ合い、の中に身を置く人間であり続けたいと思う自分にとって工藤は同志ともいえる人間、そう勝手に思ってきた。逆流のさなかに身を置かなければゆめみるけんりなどという言葉は出てくるはずもない。最期(だよね?)にその戦いの仲間に入れてもらって、うれしく思います。

◆佐々木美佳〔ささきみか〕
映画や、映像や、文章を生業にしています。/最近観た『ノマドランド』/大事なことといえば、友人と関わる時間を持つことです。あとは8時間寝て、好きな人と美味しいものを食べること。寄稿する詩は自分が忙しすぎれ倒れるんじゃないかと思うとき、合間合間に書いていました。詩がギリギリの自分を支えてくれることが多々あります。詩を実践したくなって、寄稿しようと思いたちました。/twitter: @sonarpakhi43

◆佐々木樹〔ささきみき〕
詩人/美術家。1992年宮城県生まれ・2015年法政大学社会学部卒業・2017年日本大学大学院芸術学研究科文芸学専攻修了・2020年より秋田公立美術大学大学院博士課程複合芸術専攻在籍。写真と筆蹟を中心対象とし、ビジュアル観察法を用いた方法詩の制作を行う。/荒木経惟『センチメンタルな旅』/vol.4から2度目の参加になります。ゆめみるけんりは文学領域に始まり、ほか近接領域についても幅広く、そして温かく迎えてくれる場であり、このことに私はとても感謝しています。「表現とは何だろう」と少し考え込んでしまったときに、そっと支えてくれるような場として、私のうちに存在しています。/https://mikisasaki.com/

◆佐取優太〔さとりゆうた〕
1995年生。栃木県育ち。/イプセン『人形の家』/第4号から参加。今回は創作でいかがとのご厚意のもと、自由に書きました。とはいえこれにしようと思ったのは、私の中で、『ゆめみるけんり』といえば満員電車(の中で読む)……というイメージがあったからかもしれません。ちなみに帰京後に死んだのは立原道造です。

◆砂漠で生きる〔さばくでいきる〕
1人生活ユニットです。主に短編小説を書いています。/くるり「心のなかの悪魔」/ゆめみるけんりのために、五度短編小説を書き、五度苦しく、五度楽しかったです。これからもそうやって生きていければいいと思います。/twitter: @mstkaqrg

◆杉浦朋美〔すぎうらともみ〕
刺繍が好きです。メキシコが好きです。可愛いこと、もの、人が好きです。/大森美香(監督)『プール』/自力ではなく、他人や物に支えられ生きることを認める強さや逞しさ、愛おしさをこめてちくちくしました。/instagram: @cantarina_

◆清野公一〔せいのこういち〕
美術と露語翻訳を専門にしています。妻と二人で鳩棲舎(きゅうせいしゃ)という制作ユニットをやっています。/オールダス・ハクスレー『島』/妻と始めた活動でツイッターを担当してくれと頼まれ、仕方なしにやっていたら、同じく露語翻訳をやっているとんがった雰囲気の青年(らしい人物)とたまたまつながり、興味を持って彼の主催する読書会に出かけてみたら、たまたまとてもいい人だったという、奇跡と見まがうほどの偶然の連鎖でここにたどり着きました。

◆髙野由美〔たかのゆみ〕
絵を描いています。美しい物事は心の糧。多摩美術大学日本画専攻卒業。/金井美恵子『書くことのはじまりにむかって』/①その時々で変わりますが、大事な瞬間を見逃さないように努めること、でしょうか。花が咲きそうな時、とか、子供が何かを見つけた喜びの反応とか、観察する中でドキッと日常の線が揺れるような瞬間が好きです。/https://yoooo0oumi.wordpress.com/

◆tsugumi
美術大学映像学科卒業。広島県で印刷物を作っています。食、音楽、アートなどゆるゆると。/Oasis「Don't Look Back in Anger」/初号から表紙を担当させていただいた感謝を込めて、5年前の初号のデザインを意識して作りました。世の中はあれから随分変わりました。想うこと、発したい言葉、表現していくべきもの…… そんな魂の更新が、これからの自信につながる気がしています。「ゆめみるけんり」がずっと皆さんの心にあり続けますように。/instagram: @tgm_times

◆二宮大輔〔にのみやだいすけ〕
1981年愛媛県松山市生まれ、京都育ち、ローマ第三大学卒。翻訳、通訳、あとバンドもやってます。/柴田聡子「ニューポニーテール」/①教科書的な答えですが、家族との時間。②カライモブックスがつないでくれた縁です。③ものを書くときはどうあがいてもイタリアから逃げられないので、自己紹介を兼ねたイタリア語に関するエッセイを書きました。

◆藤澤大智〔ふじさわだいち〕
永遠の都にて月をあはれと思っています。/ゴンブローヴィッチ『日記』/三度お世話になりました。ゆめみるけんり、ありがとう!マリオ・アンドレア・リゴーニ(1948-)は、イタリアの作家、文芸批評家。レオパルディ研究者。シオランの弟子であり翻訳者。ジュゼッペ・レンシ(1871-1941)は、イタリアの懐疑主義思想家。弁護士業、政治活動を行なったのち、大学で哲学を教える。

◆ふじたみさと
主婦。ゆめみるけんりvol.1〜4に寄稿。絵を描いたり、文章を書いたりしています。/一冊だけ作られた私家版の本たち/私自身のなかに、わりきれないようなおもいや、うまくいえないようなおもいがありますが、そういうよわいものからはじめたいと、ずっとかんがえています。ゆめみるけんりでは、ペソアの『船乗り』、『アナーキスト・バンカー』という作品を訳したり、エッセイを書いたりしました。いろんな方とお会いできたことが、なによりうれしかったです。/tumblr: mfrgmnt

◆プロホロワ・マリア〔Мария Прохорова〕
ロシア出身。東京外国語大学博士課程在学中。言葉に関することを何でもやっています。/多和田葉子『雪の練習生』(特に「北極を想う日」という章)/今回の詩は両方「自分が変わること」をテーマとしていますが、変化に対する見方はそれぞれ全然違います。わざとこのように書いたのではなく、発見したときは私自身も驚きました。変わることへの気持ちは、その時その時によって自然に変わっていくみたいですね。今は変わりたいと思っていても、明日は変わらない自分を求めるかもしれません。気持ちも自分も「固定値」ではありません。

◆堀谷加佳留〔ほりやかける〕
2017年東京外国語大学大学院博士前期課程卒トルコ語専攻/(最近読んだものだと)プラープダー・ユン『新しい目の旅立ち』/①深く快適な睡眠・健康維持。②第一号開始時から(工藤さん個人とは、院生時代にトークイベントのお誘いを受けて以来)ずっと羨望の眼差しでみていた『ゆめみるけんり』制作に漸く加わることが出来ました。工藤さん、その他制作陣の皆様に尽きぬ敬意と感謝の念を。翻訳できるまで待ってくれて本当にありがとうございました。

◆もう一つの椅子〔もうひとつのいす〕
「いる」を「する」場所をつくるアート活動とランドスケープ(風景)の在野研究者。/ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』/路上観察をベースにした研究のアイデアを人に話していたら、なぜ風景に関心を持つようになったか質問されたがわからなかった。いつからか、わたしは日常の風景を自分の中に刻み込んで生きていた。

2019年9月6日金曜日

メンバーズ(vol.4)

『ゆめみるけんり』vol.4メンバーの紹介です。
「作品解題、または“手紙”にまつわる記憶」と、“手紙”から連想する作品を一つ挙げてもらいました。

◆石井優貴(いしいゆうき)
死んだ人間の手紙や日記を読む機会が多いのですが、その都度、大学でお世話になったある先生が仰っていた「人間は自分にとって本当に大事なことを書き残さない」という言葉を思い出します。我が身を振り返っても、きっとそうなのだろうという気がします。シェーンベルクも一番大事なことを文章にしない人間だったようです。
 *アントン・チェーホフ『ワーニカ』

◆くだしあ
#2000年生まれ、大学生。
父の書斎に、一年前に逝去した大親友・Mさんからの手紙が飾ってあります。今でも父の背中を押し続ける、亡き人からの言葉。この様子を見て、第三者のわたしはポジティブな呪いを感じました。手紙は、残るものです。一度外在化させて他者に届いた言葉は、たとえ当人が死んでもステイし続けます。まるで、実体はなくても他者を変容させてしまう、呪いのように。
 *ソフィ・カル「限局性激痛」

◆工藤順(くどうなお) 
#労働者。プラトーノフ『不死』翻訳。HP:https://junkdough.wordpress.com
つねに誰かに語りかけるやり方で、わたしは文章を書きたいと長いこと思ってきました。そうであれば、わたしはつねに“手紙”を書きたかったのかもしれません。SNSのreply (отклик?)に対して、わたしは─responsibilityに開かれたものとしての─responce (ответ)を好みます。たとえどちらも期待できなくとも、ひとでありつづけるために、わたしは手紙を書きつづけたい。
 *『新約聖書』

◆倉畑雄太(くらはたゆうた)
久しぶりに詩を訳した。分からないところは友人から聞いた。別の友人がこの詩を見て絵を描いてくれた。手紙をやり取りするような不思議な感覚があった。
 *フランツ・カフカ『ミレナへの手紙』

◆國米陸(こくまいりく)
#instagram 絵@neconoami きのこ@kinoconoami
『あな』は、別の宇宙の別の星のすごく昔のあるひとに送った、送られた手紙だと後で気づいた。倉畑さんに何か書けばと言われ、次の日の朝、羽根木公園のベンチで書いた。ぼうっとした。
ギャビが英語に翻訳してくれた。ギャビはリトアニアの港町から来た。
去年の10月から絵は描き始まった。
 *アーノルド・ローベル 『ふたりはともだち』

◆佐々木樹(ささきみき)
#詩人/美術家。U.N.I.T. 主催。1992年 宮城県仙台市生まれ、2015年 法政大学社会学部 卒業、2017年 日本大学大学院芸術学研究科 修了 HP:http://kuri-to-unit.info
手紙の持つ力である初めて触れた時の鮮烈さと繰り返し読み直していくことで分化し続ける想像の小道の生成、綯い交ぜになったそれらを整理するための“ことば”ではないもうひとつの言語の方法論として物質詩は存在しているのかもしれない。
 *福永武彦『草の花』

◆佐取優太(さとりゆうた)
#1995年生,早大文学部卒。Note:https://note.mu/iutus_sator
キリスト教について自分の考えていること(というか,直観していること)を書いたつもりです。真新しいことは何もありませんが,ともあれ,21世紀にlingua latinaの「新文献」を編み出せたことに満足しています。
 *ペトルス・アベラルドゥス『厄災の記』

◆砂漠で生きる(さばくでいきる)
#Twitter:@mstkaqrg
青い空、白い砂浜、揺れるヤシの木。
「最高のヴァカンス」と書かれている絵葉書が遠くから届いてほしいです。
 *「やぎさんゆうびん」(童謡)

◆杉浦朋美(すぎうらともみ)
#1991年生まれ
フリオ・コルタサルの短編「パリにいる若い女性に宛てた手紙」をモチーフに制作しました。
昔の恋人からもらった手紙やもう会うことのない亡くなった人からの手紙は、書き手の分身のようでもあり、ある種の生々しさを宿しているように感じます。その生々しさと対照的な子ウサギをあえて可愛らしく紡ぎました。
 *ガブリエル・ガルシア=マルケス『コレラの時代の愛』

◆髙野由美(たかのゆみ)
#HP:https://yoooo0oumi.wordpress.com
「You leave someday」という絵は、「いつかいなくなってしまう」けれど、出逢う素晴らしさを想ったものです。
絵の上で、景色や人の姿が出てきた時、前から求めていた風景と出逢ったような感動があります。そして観る人にもそれが起こるかもしれないという、共鳴について考えています。
 *池田晶子・陸田真志『死と生きる:獄中哲学対話』

◆谷口新之介
#instagram:shinnosuke_0717
僕にはあの詩の意味がさっぱり判らず、なのにさっぱり判る気がして無邪気に何かを描きました。もしかしたらアスガルさんは、叙情の合間の隙間の隅に、あんな紋様を描いたかもしれません。描かなかったかも。どちらにせよ、僕はあんな紋様を描きました。そして嬉しいことに、僕にはあの紋様の意味がさっぱり判らないのです。
 *ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『九年目の魔法』

◆tsugumi
#1992年広島生まれ。武蔵野美術大学映像学科卒業。現在は広島市内でフリーランスとしてゆったりと活動しています。
うさぎのぬいぐるみフェリックスが世界旅行をし、持ち主のソフィへ各国から外国だよりを送ります。その手紙が封筒ごとそのままページに貼ってある可愛らしい仕掛け絵本です。小さい頃、まるで自分に手紙が届いたみたいで嬉しくて何度も読み返しました。遠く離れていても、時間と距離を経て大切に運ばれてくる愛。手紙は大掛かりなものではないが故に、送る人と受け取る人の双方だけにわかる内緒の感動(ロマンス)が詰まっているんだなぁと思える愛くるしい一冊です。
 *ランゲン/ドロープ『フェリックスの手紙』

◆藤澤大智(ふじさわだいち)
手紙を投函すると、到着までの長い時間を思い、嫌気が差す。が、じつは時間こそが手紙の核心であって、その待ち時間は、到着を味わうための作法となる。性急な人間は手紙に向かない。手紙愛好家は、聖遺物を扱うように手紙を封入し、何世紀も保管する義務を負うように封蝋し、自らの手で投函する。(マンリオ・ズガランブロ)
 *井上靖『猟銃』

◆ふじたみさと
小学生のころ、毎日のように手紙を交換しては、いろんな友達の字を真似していました。結果、いまだに字体が安定しません。
 *吉田加南子さんの文章すべて

◆プロホロワ・マリア
#ロシア出身。現在、東京外国語大学の大学院生。prokhorovamaria1*gmail.com
何年か前に徳島県の心の手紙館というところに行って、未来の自分宛に手紙を出しました。今読み返すと、そのときに悩んでいた問題は今も全く解決できていないことに苦笑してしまいます。でも、やはり書いてみて良かったです。何があっても一生一緒にいてくれる相手には、たまに手紙くらい出すのは最低限の礼儀ではないでしょうか。
 *村田沙耶香『コンビニエンスストア様』

◆村山木乃実(むらやまこのみ)
#東京外国語大学博士課程(DC2)twitter:@miveyederakht
大学生のころ、実家にいる祖母と文通していた記憶ですかね…
 *アイヌルクザート・ハマダーニーの書簡集

◆山口勲
#1983年生。てわたしブックスを主催し詩の雑誌『て、わた し』を刊行。詩の朗読会 千葉詩亭・くにたちコミュニティ共催。HP:http://tewatashibooks.com/
2010年から2015年にかけて、「なくしたものにお手紙をおくろう」というワークショップをやっていた。
なくしたものにお手紙をおくり、他の人がなくしたものになったつもりでお返事を書くというワークショップ。
私の周りがいそがしくなり、ワークショップができなくなった結果、家にはたくさんのお手紙が置いてある。
この手紙の一つ一つにお返事を書いてもらえる人を探す機会を作ることが求められているのだけど
 *アーノルド・ローベル 『ふたりはともだち』

◆よるか
#blog:http://yoruka282232356.wordpress.com
ダンボール一箱に収まり切らないぐらい手紙を書き、手紙をもらった。そして処分もしてきた。メールはゴミ箱に入れてもそこまで心が痛まないのに、手紙をシュレッダーにかけた時は心が痛んだ。不思議なものである。そこにはなんの違いがあるんだろう。手紙も電子メールもLINEやWhat’s Appも誰かからの言葉には変わりないのに。心痛む記憶が手紙にはある。
 *「魔女の宅急便」(アニメ)

◆Kamila Lin(かみらりん)
#FB:Kamila Lin Illustration
Привет, меня зовут Камила, рисую иллюстрации для себя, а работаю оформителем витрин в городе Санкт-Петербурге. (хотя это все пустые факты, и они меня никак не выражают..)[こんにちは、カミラです。イラストは自分のために描いています。サンクト・ペテルブルグという街でショーウィンドウをつくる仕事をしています。(これはぜんぶつまらない事実でしかないけれど、どうしてもこんなふうにしか書けないので……)]
 *フィンセント・ファン・ゴッホ「弟テオへの手紙」

2018年9月20日木曜日

メンバーズ(vol.3)

本誌掲載内容から、Who's Whoをご紹介します。今回のメンバーは12名。
それぞれ、「眠り」「ゆめ」から連想する本、映画などを挙げてもらいました。

◆石井優貴(いしいゆうき)
寝ながら諸々について考えこむ癖が抜けず不眠症なのですが、睡眠導入剤代わりに聴く音楽のうちで一番効くのがアルノルト・シェーンベルクの弦楽四重奏曲第3番です。音型を一つずつ拾っていくと曲が次第に解体されていき、思考が溶けます。

◆s.s.g.(えすえすじー)
Twitter:@ph010_
作品を書いた時の自分とは今では全くちがう気分で、日記をクローゼットにしまった女の子は、今頃何をしているだろう、もう少し彼女と交換日記を続けたいと思いながら、夏の厳しさや、アイスクリームの甘さを味わっています。
 *Deerhunter『Helicopter』
 *Air『Virgin Suicides』
 *Department of Eagles『Noam Chomsky Spring Break 2002』

◆ermhoi(えるむほい)
Twitter:@Dooonermhoi
ermhoiという名前は、3分で決めたのですが、最後の「ほい」という音が相手の緊張を緩める効果があるみたいなので気に入っています。音楽が好きです。
私は本をあまり読みませんが、夢野久作のドグラ・マグラは読めました。ああいう細密な事実と謎と伏線が広がっていくのような夢を見て、私は天才なんだって興奮して目を覚ます、そんな日が来たらいいなと思っています。

◆片貝未来央(かたがいみきお)
しばしば人は眠るために本を読みます。現実が悪夢のようになってしまっているいま、私たちは目を開けたまま夢を見るために本を読むのかも知れません。
 *ガブリエル・ガルシア=マルケス「眠れる美女の飛行」(『十二の遍歴の物語』より)

◆工藤順(くどうなお)
Web:https://junkdough.wordpress.com
眠りとは、ある種の避難所(シェルター)のようなものと考えてこの特集を始めたのですが、続々集まる原稿を見て再考を迫られました。むしろ眠りは死と分かち難いものであり、またあまりに憎いものでもあり得る……。ひとが一人に還る場所、だからこそわたしと世界との、あるいはわたしとわたしとの関係があまりに露わになるのかもしれません。
 *ゲンナージイ・アイギ「いまではいつも雪が」(『アイギ詩集』より)

◆倉畑雄太(くらはたゆうた)
‪何もしないで過ごす時間が、夢のような時間になってしまったことを悲しく思う。東京でぼーっと過ごした夏休みが終わり、切実にそう感じた。夜のぬるっとした街の光、明け方の青みがかった空、この映画で描かれるすべてが懐かしく、愛おしかった。‬
 *三宅唱(監督)『きみの鳥はうたえる』

◆Copal Ildeaux(こぱるいるどー)
Instagram:@copal.ildeaux
この夏にシベリア鉄道でロシアを縦断しました。総距離九二五八キロ、六日間の旅のお供は『罪と罰』。物語の中で、人はよく悪夢にうなされ、妄想の虜となります。この本を読んでいると、同じ車両に乗り合わせたロシア人の老若男女と仲良くなれました。
一〇歳くらいの女の子が紙面に印刷された「人間」という文字を指さし、「なにこれー、変な形!」というような反応をしました。
 *ドストエフスキー『罪と罰』

◆砂漠で生きる(さばくでいきる)
Twitter:@mstkaqrg
最近は宇宙ユーチューバーとして活動しています。宇宙ユーチューバーとは、宇宙のユーチューバーのことです。宇宙とつながっていればチャンネル登録できます。よろしくお願いします。夜空を見上げると気持ちいいよね。
 *『2001年宇宙の旅』(映画)

◆つぐみ
幼い頃にみた無数の甘い夢を糧に、今ここを過ごしているグラフィックデザイナーです。
夢から連想する本は、ヘッセの『デミアン』です。幼い頃に抱く明と暗、2つの夢。夢(青春)の世界では正義が霞みます。ゆえに、覚めた時の束の間の美しさは、いくつになっても色褪せないなあと。そんなことを考えながら懐かしい夢を今日もまた求めてしまいます。

◆nemunemuおばけ(ねむねむおばけ)
一人っ子で育ちました。恋人と話しているとき、弟がいたらこんな感じかな、と思う瞬間が度々あり、姉になりたかった自分、という思いもよらぬアイデンティティーの発見に至りました。そんな作り話です。
 *吉本ばなな『白河夜船』
 *Victor Erice『lifeline』(短編映画)

◆藤澤大智(ふじさわだいち)
良心の声にそのまま耳を傾けようとする者は、自分の身近や内面の事柄については沈黙できなければならない(アルトゥーロ・グラフ)。
 *山本直樹『ラジオの仏 山本の夢辞書1975-2004』

◆藤田瑞都(ふじたみさと)
眠りに落ちる以前の世界と目覚めて以後の世界は、地続きなのでしょうか? 私たちは、眠るたび何を忘却しているのでしょうか。眠りとめざめのあいだで、私は何者なのでしょうか。不眠は、再びめざめることへの、生への不信感から生じるのでしょうか。……
眠ることは、世界の秘密です。
 *日渡早紀『ぼくの地球を守って』:高校生六人が、眠りの中で前世を体験します。眠りという仮死状態で前世を生きる彼らの時間は、「未来へ還っていく」。それは、どういうことなのでしょうか……? 不思議な眠りの世界を冒険したい人へ。

2017年12月7日木曜日

メンバーズ(vol.2)

「ゆめみるけんり」vol.2、発売間近です。(以下は本誌に掲載されている内容です。)

今回寄稿してくれたみなさんに、自己紹介に代わり、次のお題で一文書いてもらいました。

「はたらく」ときにある、ちょっと楽しい瞬間について。あるいは「はたらく」ときに見える、風景について。
*印で記したのは、各々が考える「はたらく」ことについての本です。


◆藍屋菜々子(あいやななこ)
Twitter/Instagram:@i8nanak
Web:aiyananako.jimdo.com
雪が好きです。しんしんと雪が、風景をまっしろの非日常にしていくのを眺めていると、地球の重力が揺らぐような気がして、痛みも和らぐのがふしぎです。合わなかった飲食店バイトも、雪の日だけはへっちゃらでした。
 *西村佳哲『自分をいかして生きる』

◆葛西裕人(かさいゆうと)
本を紹介することで、自己紹介に代えます。
 *玄田有史『14歳からの仕事道』
 *柏木博『家事の政治学』
 *M. Frauenfelder『Made by Hand:ポンコツDIYで自分を取り戻す』

◆工藤順(くどうなお)
https://junkdough.wordpress.com
知人が亡くなったという報せを受けたのは月曜深夜でしたが、翌火曜日に仕事をしながら考えたことは、はたらくことは耐えがたい強制力でもあるが、そのルーティンでもってはり裂けるような心情に蓋をしてくれる、ということでした。それが善いことなのか悪いことなのか、私には判断がつきませんでした。
 *よしながふみ『きのう何食べた?』

◆倉畑雄太(くらはたゆうた)
これまで働くことについて深く考えたことがなく、なかなか本が思い浮かびませんでした。結局、原稿の提出が最後になってしまったようです。
ふと脳裏に浮かんだのは、文学に別れを告げアフリカへ渡ったランボーと、文学に別れを告げられず働く自分でした。
 *『ランボー全集』(青土社、2006)

◆Copal Ildeaux(こぱるいるどー)
Instagram:@copal.ildeaux
「社会のなかではたらく」って、それぞれの才能を持ち寄って、弱さをかばい合って共に生きていくことだと思います。だから、「はたらく」って、きわめて人間(じんかん/にんげん)的な行為だなと、肯定したいです。
 *石渡晃一『ぼくは、世界一楽しいサラリーマン』

◆砂漠で生きる(さばくでいきる)
Twitter:@mstkaqrg
はたらいているとき楽しいのは移動するときです。電車やバスの中で、次の打ち合わせの準備をしたり、スマートフォンをチェックしたりしてはいけません。遠くの山や雲を見るのです。間抜けな顔で見るのです。
 *夏目漱石『それから』

◆つぐみ
お揃いのピンクのバーキン。シャネルの香水。雑誌のワンピース……「普通に」幸福にOLをしていると、すべての労働は「恋愛」にそっくりだと悟る。愛も資本主義も手難しいからこそ、普通にはたらくって大変!
 *岡崎京子『pink』

◆西岡かれん(にしおかかれん)
文学研究者(のたまご)として、わたしの仕事はいつも、小説の向こうに広がる景色を見ようとする試みから始まります。それがテキサスの牧場であれ、ニューヨークの摩天楼であれ。
 *村上春樹『職業としての小説家』

◆野中沙織(のなかさおり)
あまりに切羽詰まりすぎて、みんながずっとニコニコ笑いながら仕事をしていたときは楽しかったです。
 *アンソニー・バージェス『時計じかけのオレンジ』

◆藤田瑞都(ふじたみさと)
プログラムを流すときの、スナップの効いた感動的な指づかい。
まーちゃんだって、マイクをまわす。
ほんとはだれだって、いつだって、踊りたい。
 *栗原康『死してなお踊れ:一遍上人伝』
 *エリック・ホッファー『エリック・ホッファー自伝:構想された真実』
 *中里仁美『善き門外漢 vol.3 アウトサイダーの向上心』

◆堀池沙織(ほりいけさおり)
職場の窓から見える東京です。夜に静かに煌めくビル群と東京湾、スカイツリー。就職で上京した私にとっては孤独の景色であり、今までの仕事での大切な出会いを包含するあたたかな景色です。
 *David Foster Wallace “This is Water”

◆八木ひろ子(やぎひろこ)
通勤電車の窓からは東京の景色が見えます。いいことのあった日はキラキラして見えます。
 *大島弓子『毎日が夏休み』

2017年2月25日土曜日

メンバーズ(vol.1)

目下9人でやっています。2016年の東京国際文芸フェスティバルというイベントのなかで、「多文化の海をおよぐ」というオリジナルイベントを一緒に運営したメンバーを中心にして、いろいろな人たちが参加してとりあえずのコミュニティを形作っています。

ほとんどのメンバーがそれぞれ様々な言語圏(英米、ロシア、アラビア、ヒンディー、イタリア・・・)の文学を専攻していたのですが、それぞれのタイミングで大学を卒業して社会に放り出されることになりました。「ゆめみるけんり」は、すなわち通勤電車のなかで夢をみる権利と言ってもいいかもしれません。「どのようにして社会の中で、詩を擁護しつづけられるか? 詩のための、すなわちわたしのための場所を確保できるか?」という問いかけが私たちの中心的な問題設定です。

本誌から、メンバー自己紹介を転載します。

***

〈葛西裕人 Yuto Kasai〉
白樺にかこまれた道東で、いくつかの夏をすごしたことを思いだしました。

〈工藤順 Nao Kudo〉
ロシア現代文化(詩)。図書館ではたらいています。身体の一部が次第に本になりつつあるのではないか、という疑念、そして恐怖と闘っています。☞https://junkdough.wordpress.com

〈倉畑雄太 Yuta Kurahata〉
大学時代、インドのペルシア語詩について学ぶ。

〈砂漠で生きる sabaku de ikiru〉
1人生活ユニットです。生活をすることで生活を成り立たせています。☞twitter:@mstkaqrg

〈つぐみ Tsugumi〉
広島でOLやってます。苦手なこと。おいしいご飯を作ること。上手にお酒を呑むこと。

〈内藤嵩久 Takahisa Naito〉
1993年新潟県燕市生。

〈藤田瑞都 Misato Fujita〉
孤独だったペソア。自分の名前すら忘れるような、冬の深い眠りを、かれももとめたでしょうか。

〈Copal Ildeaux〉
昼間は会社員、火曜の夜は画家に変身。
ダイヤモンドが似合う、カッコいいおばあちゃんに向けて年を重ねてゆきたい23歳。☞Instagram:@copal.ildeaux

〈八木ひろ子 Hiroko Yagi〉
季節の中では冬がいちばん好きです。