2018年9月29日土曜日

【イベントレポート】Language Beyond(第5回)

杉並区善福寺のスペース「あなたの公-差-転」でブッククラブ「Language Beyond」を隔月開催しています。

第5回は8月11日に開催し、以下の2篇をめぐっておしゃべりしました。
・ソル・フアナ『知への賛歌—修道女フアナの手紙』(光文社古典新訳文庫)
・アンドレイ・プラトーノフ「不死」(オリジナル翻訳)

レポートは以下のページから読むことができます。
http://kosaten.org/ja/language-beyond/

◆第6回は、10月21日(日)に行う予定です。参加をお待ちしています!
16:30スタート、参加費は無料です。
以下の2篇を読みます:
・李承雨「香港パク」(『香港パク』より)
・村田沙耶香『コンビニ人間』

このブッククラブでは一つだけの「正しい読み方」を探るのではなく、「参加者のみなさん一人ひとりがどう読んだのか」ということを大切にしています。

*あなたの公-差-転:http://kosaten.org/
*FBイベントページ:https://www.facebook.com/events/296586427739007/




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“Language Beyond”とは?

相手のことばをどうやって理解したらよいでしょうか?自分のことばではない表現をどうやって味わったらよいでしょうか?本のページに固定された文字から、漣のように広がる声、身体に溢れているボディランゲージ、それぞれの記号があり、様々なシグナルが飛んでいますが、その海の中どんどんその本質から離れてしまうという感覚も強いかもしれません。一方、無数のサインに囲まれると無限な意味も読み取れ、ひとつの解釈や視野が絶対足りない世界に生きているということを改めて実感できます。

一言に「ことば(language)」といってもその種類はさまざまです。わたしの身体を取り巻く無数のサイン。そこには無限の意味を読み取ることができ、「ことば」を捉えるにはひとつの解釈・ひとつの視野だけで足りません。一方「ことば」の海のなかで、私たちは時に心のなかに抱えた「この感じ」を言い表すためのことばを見失ってしまうことはないでしょうか。

向こうにある言語。まだ手が届かないところにある言葉。今まで出会っていない、わからない表現だけど、探ってみれば自分の言葉とつながるかもしれません。

世界中のことば
ことばの奥深くにある世界
を通して
相手と自分
の間の
ズレ

見つめて
縮小し、拡大し、
新たな見方
が見えて
新たな表現
が舌先に集まってきます

ブッククラブに参加するには?

・毎回参加者のうち二人が一冊ずつ本を選び、参加者のみなさんはできるだけ事前にその本を読みます。(短編が多くて、図書館から借りたり、本屋さんやネットで買ったりすることができます)
・当日はその本に対する感想、疑問などを多様な観点を持つ参加者と共有し、より深くまで議論できます。このブッククラブでは一つだけの「正しい読み方」を探るのではなく、「参加者のみなさん一人ひとりがどう読んだのか」ということが大切です。
・事前に本が読めなくても参加することが可能ですが、自分なりにその本に向き合ってみるとより積極的に参加できると思います。
・当日進行とその後の記録になるレポートも交代しながら進めていきます!

2018年9月20日木曜日

メンバーズ(vol.3)

本誌掲載内容から、Who's Whoをご紹介します。今回のメンバーは12名。
それぞれ、「眠り」「ゆめ」から連想する本、映画などを挙げてもらいました。

◆石井優貴(いしいゆうき)
寝ながら諸々について考えこむ癖が抜けず不眠症なのですが、睡眠導入剤代わりに聴く音楽のうちで一番効くのがアルノルト・シェーンベルクの弦楽四重奏曲第3番です。音型を一つずつ拾っていくと曲が次第に解体されていき、思考が溶けます。

◆s.s.g.(えすえすじー)
Twitter:@ph010_
作品を書いた時の自分とは今では全くちがう気分で、日記をクローゼットにしまった女の子は、今頃何をしているだろう、もう少し彼女と交換日記を続けたいと思いながら、夏の厳しさや、アイスクリームの甘さを味わっています。
 *Deerhunter『Helicopter』
 *Air『Virgin Suicides』
 *Department of Eagles『Noam Chomsky Spring Break 2002』

◆ermhoi(えるむほい)
Twitter:@Dooonermhoi
ermhoiという名前は、3分で決めたのですが、最後の「ほい」という音が相手の緊張を緩める効果があるみたいなので気に入っています。音楽が好きです。
私は本をあまり読みませんが、夢野久作のドグラ・マグラは読めました。ああいう細密な事実と謎と伏線が広がっていくのような夢を見て、私は天才なんだって興奮して目を覚ます、そんな日が来たらいいなと思っています。

◆片貝未来央(かたがいみきお)
しばしば人は眠るために本を読みます。現実が悪夢のようになってしまっているいま、私たちは目を開けたまま夢を見るために本を読むのかも知れません。
 *ガブリエル・ガルシア=マルケス「眠れる美女の飛行」(『十二の遍歴の物語』より)

◆工藤順(くどうなお)
Web:https://junkdough.wordpress.com
眠りとは、ある種の避難所(シェルター)のようなものと考えてこの特集を始めたのですが、続々集まる原稿を見て再考を迫られました。むしろ眠りは死と分かち難いものであり、またあまりに憎いものでもあり得る……。ひとが一人に還る場所、だからこそわたしと世界との、あるいはわたしとわたしとの関係があまりに露わになるのかもしれません。
 *ゲンナージイ・アイギ「いまではいつも雪が」(『アイギ詩集』より)

◆倉畑雄太(くらはたゆうた)
‪何もしないで過ごす時間が、夢のような時間になってしまったことを悲しく思う。東京でぼーっと過ごした夏休みが終わり、切実にそう感じた。夜のぬるっとした街の光、明け方の青みがかった空、この映画で描かれるすべてが懐かしく、愛おしかった。‬
 *三宅唱(監督)『きみの鳥はうたえる』

◆Copal Ildeaux(こぱるいるどー)
Instagram:@copal.ildeaux
この夏にシベリア鉄道でロシアを縦断しました。総距離九二五八キロ、六日間の旅のお供は『罪と罰』。物語の中で、人はよく悪夢にうなされ、妄想の虜となります。この本を読んでいると、同じ車両に乗り合わせたロシア人の老若男女と仲良くなれました。
一〇歳くらいの女の子が紙面に印刷された「人間」という文字を指さし、「なにこれー、変な形!」というような反応をしました。
 *ドストエフスキー『罪と罰』

◆砂漠で生きる(さばくでいきる)
Twitter:@mstkaqrg
最近は宇宙ユーチューバーとして活動しています。宇宙ユーチューバーとは、宇宙のユーチューバーのことです。宇宙とつながっていればチャンネル登録できます。よろしくお願いします。夜空を見上げると気持ちいいよね。
 *『2001年宇宙の旅』(映画)

◆つぐみ
幼い頃にみた無数の甘い夢を糧に、今ここを過ごしているグラフィックデザイナーです。
夢から連想する本は、ヘッセの『デミアン』です。幼い頃に抱く明と暗、2つの夢。夢(青春)の世界では正義が霞みます。ゆえに、覚めた時の束の間の美しさは、いくつになっても色褪せないなあと。そんなことを考えながら懐かしい夢を今日もまた求めてしまいます。

◆nemunemuおばけ(ねむねむおばけ)
一人っ子で育ちました。恋人と話しているとき、弟がいたらこんな感じかな、と思う瞬間が度々あり、姉になりたかった自分、という思いもよらぬアイデンティティーの発見に至りました。そんな作り話です。
 *吉本ばなな『白河夜船』
 *Victor Erice『lifeline』(短編映画)

◆藤澤大智(ふじさわだいち)
良心の声にそのまま耳を傾けようとする者は、自分の身近や内面の事柄については沈黙できなければならない(アルトゥーロ・グラフ)。
 *山本直樹『ラジオの仏 山本の夢辞書1975-2004』

◆藤田瑞都(ふじたみさと)
眠りに落ちる以前の世界と目覚めて以後の世界は、地続きなのでしょうか? 私たちは、眠るたび何を忘却しているのでしょうか。眠りとめざめのあいだで、私は何者なのでしょうか。不眠は、再びめざめることへの、生への不信感から生じるのでしょうか。……
眠ることは、世界の秘密です。
 *日渡早紀『ぼくの地球を守って』:高校生六人が、眠りの中で前世を体験します。眠りという仮死状態で前世を生きる彼らの時間は、「未来へ還っていく」。それは、どういうことなのでしょうか……? 不思議な眠りの世界を冒険したい人へ。

2018年9月16日日曜日

コンテンツ(vol.3)

「ゆめみるけんり vol.3」の目次です。

『ゆめみるけんり』vol.3
◆特集:睡眠主義
・ermhoi「Dream Land/Beautiful」
・nemunemuおばけ「おばけのねむねむうさぎ」
・エレーナ・グロー/工藤順「めろち」
・ウィルフレッド・オーウェン/石井優貴「戦争詩集より」
・藤澤大智「眠りへの祈り——イタリア詩アンソロジー」
・片貝未来央「誕生日」
・アンドレイ・プラトーノフ/工藤杳「『ポトゥダニ川』より」
・s.s.g.「Diary in her closet.」
・倉畑雄太「出発」

◆書店コラム:水中書店さん

◆特集2:わたしたちの集住(シノイキスモス)
・「公共の場でベンチに座ることについての宣言」
・Copal Ildeaux「香港集住探訪記」
・砂漠で生きる「ブループリント・プロジェクト」

◆連載
フェルナンド・ペソア/ふじたみさと・ふじたなお「アナーキスト・バンカー(上)」
ニコライ・フョードロフ/工藤順「著作者の義務と、博物館・図書館の権利」(2)

表紙:つぐみ
写真:s.s.g.+藤田瑞都
DTP:國見哲人+工藤順
ロゴデザイン:Copal Ildeaux

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Table of contents for yumemirukenri vol.3. The issue is: Sleepism.

yumemirukenri vol.3
◆Issue: Sleepism
- ermhoi "Dream Land/Beautiful"
- nemunemu obake "Sleepy Rabbit Ghost"
- Elena Guro/Nao Kudo "Melochi"
- Wilfred Owen/Yuki Ishii "From the War Poems"
- Daichi Fujisawa "Invocazione al Sonno/Invocation to Sleep"
- Mikiho Katagai "Birthdays"
- Andrei Platonov/Nao Kudo "From 'Potudan River'"
- s.s.g. "Diary in her closet."
- Yuta Kurahata "Departure"

◆Book Store Column: Suichu Shoten (Mitaka, Tokyo)

◆Special: Our Synoecism/συνοικισμóς
A manifesto about sitting on a bench in a public space
Copal Ildeaux "Hong Kong, Synoikismos Visiting Record"
sabaku de ikiru "Blue Print Project"

◆Serials
Fernando Pessoa/Misato e Nao Fujita "O Banqueiro Anarquista -1-"
Nikolai Fyodorov/Nao Kudo "Author’s Responsibility and the Right of Library as Museum -2-"

Cover designed by Tsugumi
Photography by s.s.g. + Misato Fujita
DTP by Tetsuto Kunimi + Nao Kudo
Emblem designed by: Copal Ildeaux