2018年12月20日木曜日

「ゆめみるけんり」vol.3

★在庫僅少です!ゆめみるけんりの手元在庫も完売しています。
通販では、書肆鯖さん;リアル店舗ではがたんごとんさん(小樽)、レティシア書房さん(京都)に在庫があると伺っています。お早めにご入手ください。(2021/9追記)

表紙デザイン:つぐみ
Cover designed by Tsugumi

表紙イメージができました!今回も、つぐみさんにお願いしました。
最新情報はこの記事を更新する形でお知らせします。

「ゆめみるけんり」vol.3(2018年11月発売)
特集「睡眠主義」

コンテンツ:今号の目次。
メンバーズ:今号に参加した人たち。

・電子書籍版:Kindle Storeにて販売中です。300円。一部、書籍版のみのコンテンツがあります。
・紙版:2018年12月刊行。予価:1200円。取り扱い書店さんにつきましては【入手方法】のページを更新していきます。

Our zine "yumemirukenri 03" is now on sale. The issue is: Sleep-ism.
E-book can be purchased on Amazon's Kindle Store for approx. $3.00.
Printed ver. is available for ¥1200. See the page "How to purchase?" for the list of book stores.


〈vol.3によせて〉

ひそかに、ささやきを交わすように、私たちの「ねむり」について語りはじめようとおもいます。vol.3のテーマを「睡眠主義/Sleep-ism」となづけました。睡眠と、イズム?
 ヴァージニア・ウルフは、女性が作家になるためには〈五百ポンドの年収〉と〈自分一人の部屋〉が必要だ。といいました。女性が個室を持てなかった時代ですからウルフは女性に限定した話をしていますが、これは当然、一般的になにか書きものをするためには(性を問わず)独りぼっちになれる場所が必要だということになります。
 いま、社会のなかで、私たちにとっての〈自分一人の部屋〉はどこにあるのでしょう。カラオケ? トイレ? ヘッドホンの中でしょうか? 個人的ないとなみが可能になるためには、無駄がなくてはいけないのだとおもいます。カラオケも、トイレも、ヘッドホンも、それは用途の限定された「〜のため」に用意された場所であり、〈すること〉に満ちています。そこでは歌い、漫画を読むことはできても、ぼんやりと窓の外をみること、愛の感情をいだくこと、宇宙や世界について夢をめぐらせることは困難です。
 それでも夢は、ねむりは——私にとっての〈自分一人の部屋〉であったし、これからもありつづけます。〈すること〉への私的な抵抗として、〈しないこと〉としてのねむりを、そぐわなさを顧みず「主義」として試みに打ちだしてみることにしました。
 ねむり——そこは誰にも奪われてはならないはずの領域ですが、現代の生活において睡眠は、例えば仕事に奪われます。不安に奪われます。漠然とした「眠れなさ」もありますし、いつまでも起きていようとする欲望に身を委ねることもあります。別の観点では、今後もし子育てをすることになれば愛おしい子どもに睡眠を奪われるということもあり得るでしょう(チェーホフは「ねむい」という短篇を残しました)。
 眠れなくてもいい、しかしわたしには「ねむり」へのけんりがあるということ。それが、ひょっとしたら〈すること〉の社会のなかで、〈しない〉ための勇気をくれるかもしれません。
 すべての寝坊と、寝ぐせと、うたた寝のための〈睡眠主義〉を。

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Intimately, as if we exchange whispers, we are beginning to talk about sleep. The vol.3 of yumemirukenri is entitled: Sleep-ism. Sleep-plus-ism?

Virginia Woolf has once told that it is necessary for a woman who wishes to be a writer to have the earning of 500 pounds per a year and "a room of one's own." It is natural that Woolf has focused the argument only on a woman, for she wrote in a time when there was no private space especially for women. But, of course, it can generally be said that anyone (regardless of his/her sexual identity) needs such money and a room to be independent, or to be alone.

And now, looking around yourself, where can you find "a room for your own?" - In a karaoke room? In toilet? Or in a headphone? For every personal act, I assume, a useless space is needed. Karaoke rooms, toilets or headphones - they all are a place "for" some purposes which has a limited use, and they are filled up with a huge amount of "do"s. Though you can sing or read comics there, it is difficult to observe vacantly outside the window, to hold the feeling of love or to hold dreams about the universe or the world.

However, the dream, the sleep, has been "a room of my own" and it continues to be. By the term "sleep-ism," I tried to put up our sleep as a "not-do", as a personal resistance against "do"s, despite unsuitableness of combination of the words.

Sleep - it's a realm which nothing can deprive of me. However in the modern life, sleep will be taken away by the work for example. Or by uneasiness. Or sometimes we may just feel it's impossible to sleep, or we may resign ourselves to desire to stay awake through the night. From another point of view, if we are going to have a baby, the darling baby may take away sleep from you (as in A.Chekhov's novel "Sleepy").

We may not have to sleep, but I surely have the right to sleep. - That sort of idea may give us a courage "not to do" in the society of "do"s.

Now, bring on the "sleepism" for all the late risers, for all the sleep-tousled hairs and for all the naps.

(工藤/NK)

2018年12月9日日曜日

【イベントレポート】トーク+朗読会(11/30-12/02)

「ゆめみるけんり vol.3」の刊行を記念して、アーティストの田口賢治さんとともに、イベントを行いました。
ご来場、ありがとうございました!

◆anoxia lounge種を蒔く:vol.9「睡眠主義」

12/1(土)13:00開場/13:30開演
会場:上池袋anoxia(豊島区上池袋4-20-1)
出演:ゆめみるけんり(砂漠で生きる、倉畑雄太、藤田瑞都、工藤杳)
企画:加藤裕士(anoxia)、田口賢治

キーフレーズ的に使われた、バシュラールのことば。

少ない人数で火鉢を囲みながら、ゆめみるけんりの事はじめ、今回の特集、「ゆめ」について親密にお話をしました。私たちの側からすれば、vol.3を出したいま、あらためて「ゆめみるけんり」という集まり・媒体について考えなおし、私たちにとっての「ゆめみる」ことについて深く考えるよい機会になりました。
藤田瑞都さんによるペソアの朗読と、一人生活ユニット「砂漠で生きる」から野口さんによる夢の朗読も行われました。



当日参加してくださった福家さんの写真。


◆[ _ ] UNDER BAR vol.11 「ゆめみるけんり」

小雪と大雪の合間に
11/30(金)-12/2(日)19:00-23:00
出演:
11/30(金)藤澤大智/イタリア詩「眠りへの祈り」
12/1(土)s.s.g./オリジナル「Diary in her closet.」など(+田口賢治=木霊)
12/2(日)藤田瑞都/フェルナンド・ペソア「船乗り」(+工藤杳=『不穏の書』から断片の朗読、+田口賢治=木霊)

各日、それぞれが独自の世界をつくり、朗読が行われました。翻訳者、創作者本人が朗読をするという特別な経験。当日は、「ゆめみるけんり vol.3」とともに、限定パンフレット(活版印刷)も販売しました。

限定パンフレットは、ビオトープ170kgミッドナイトブルーに銀色インク(両面4版)で活版印刷したもの。構想については、後ろに掲載した田口さんの「備忘録」をあわせてお読みください。この印刷にあたっては、活版印刷所での印刷工程を見学させていただくなど、とても貴重な経験をさせてもらいました。→別記事
組版・製版・印刷は三木弘志さん(有限会社弘陽)、デザイン・レイアウト・構想は田口さんにお願いしました。予想をはるかに超え、これひとつで凛とした存在感のある作品が完成しました。

限定パンフレット。後日販売予定です。


1日目の藤澤さんは、イタリア思想・文学(専門はジャコモ・レオパルディ)の研究者。今回「ゆめみるけんり」のために翻訳した6人の詩人の詩についての解説を交えながら、原語と日本語訳を朗読してくれました。それぞれの詩・詩人についての深い理解・解釈にもとづいた、演劇的で、魂のふるえるような朗読でした。

藤澤さんの朗読(1日目)
2日目のs.s.g.さんは、オリジナル作品と、最近読んで心にとどまっている詩を2篇(ノラ・ゴムリンガーと文月悠光)朗読してくれました。おだやかでやさしく、心にすっと寄り添うような朗読。

3日目は、「ゆめみるけんり」の1、2号に連載したフェルナンド・ペソアの「船乗り」の後半部分を、訳者の藤田瑞都さんに朗読してもらいました。途中でペソア役(?)として、工藤杳が『不穏の書』から選んだ3つの断章を挿入、さらに田口賢治さんが木霊として参加しました。この場でしか成り立たない朗読になったと思います(のちの大アクシデントも含めて)。

s.s.g.さんの朗読(2日目)

同じく、福家さんの写真。

3日目に参加してくださったMさんが提供してくださった写真。



◇イベントの主催、田口賢治さんの視点から。



きっとイベントはまた行うとおもいますので、今回は残念ながら来場できなかった方も、次はぜひお越しください。今回来場してくださったみなさま、またどこかでお会いしましょう!

(工藤)